パイプラインハザード(Pipeline Hazard)は、現代のCPUが高速処理を実現する上で避けて通れない重要な概念です。
プロセッサ内部では複数の命令が同時に処理されますが、その並列処理を阻害する要因がこの「ハザード」です。本記事では、パイプライン処理の概要から、パイプラインハザードの種類、発生原因と対処法まで、エンジニア向けに詳しく解説します。
パイプライン処理の仕組みとハザードの関係
パイプライン処理の基本とは?
パイプライン処理は、1つの命令を複数のステージ(段階)に分割し、各ステージを別々のハードウェアユニットで処理することで、複数命令を並列実行する方式です。
例として、次のようなステージ構成が一般的です:
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フェッチ(Fetch):命令の読み込み
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デコード(Decode):命令の解釈
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エグゼキュート(Execute):命令の実行
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メモリアクセス(Memory Access):データの読み書き
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ライトバック(Write Back):結果の保存
この方式により、CPUは同時に数命令を処理することで処理速度の向上を実現します。
しかし、理想通りに動かない現実 ― パイプラインハザードとは?
パイプライン処理には、命令同士の依存関係やリソース競合などが原因で処理が一時停止または巻き戻しされるケースがあります。
これを総称して 「パイプラインハザード」と呼びます。
命令の実行が順調に進まず、パフォーマンスが低下する原因となるため、CPU設計では非常に重要な対処ポイントとなっています。
パイプラインハザードの3つの主な種類と対策
1. データハザード(Data Hazard)
発生原因
データハザードは、ある命令が直前の命令の実行結果を必要とする場合に発生します。
前の命令の実行が完了していない状態で後続の命令が結果を必要とするため、処理が待たされることになります。