**パイプ(pipe)は、複数のプログラム間でデータをやり取りするためのプロセス間通信(IPC:Inter-Process Communication)**の基本技術のひとつです。
UNIX系OSで広く使われているこの機能は、効率的なコマンド連携やバックエンド処理の実装に欠かせない仕組みです。
本記事では、ITエンジニア向けに「パイプ」の仕組みや種類、具体的な使い方について詳しく解説し、匿名パイプと名前付きパイプの違いについてもわかりやすく紹介します。
パイプとは?基本概念と仕組み
プログラム間のデータ連携を実現する仕組み
パイプとは、一方のプログラムの標準出力(stdout)を、他方のプログラムの標準入力(stdin)へ渡すことで、処理を連続的に実行させる技術です。
これにより、シェルスクリプトやバッチ処理などにおいて、小さな処理を組み合わせて大きな処理を構成することが可能になります。
UNIXにおけるパイプ記法の例
このような記法は、非常に簡潔かつ直感的で、処理の流れを視覚的に理解しやすいのが特長です。
匿名パイプ(anonymous pipe)とは?
特徴と利用場面
**匿名パイプ(無名パイプ)**は、プロセスが起動時に一時的に作成するパイプで、主に親子プロセス間の通信に使われます。
識別名を持たないため、パイプの作成と使用が同時に行われる場面に適しています。
使用例(UNIXシェル)
このように、フィルタ処理を連結して流れるようなデータ処理を実現できます。
利点
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作成が簡単
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記法が短くて済む
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一時的な用途に適している
欠点
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識別名がないため、プロセス間の独立性が低い
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非同期通信や複数アクセスには不向き
名前付きパイプ(named pipe)とは?
基本的な仕組み
**名前付きパイプ(named pipe)**は、識別可能な名前を持つパイプです。
**FIFO(First In, First Out)**方式でデータが処理され、プログラム間でファイルのようにアクセス可能です。
別のプロセスで /tmp/mypipe
を開くことで、ファイル感覚でデータ通信が可能になります。
利点と応用
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複数のプログラムが同時アクセス可能
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非同期・双方向通信に対応
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ネットワーク越し通信にも拡張可能(Windowsなど)
Windowsの使用例(C/C++)
名前付きパイプはローカル環境でのサーバ・クライアント通信の簡易実装にも利用されます。
匿名パイプと名前付きパイプの違い
活用事例:パイプの実践的な応用
スクリプト連携処理の構築
アプリケーション間のバッファ通信
WebアプリケーションやIoTデバイスの制御などで、名前付きパイプを使って非同期にデータを受け渡す設計は広く使われています。
まとめ
**パイプ(pipe)**は、効率的かつ柔軟なプログラム間通信を実現する技術です。
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匿名パイプは、簡易で一時的な処理連携に最適
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名前付きパイプは、より汎用的かつ高度な通信設計が可能
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UNIX系OSやWindowsなど、さまざまな環境で利用可能
特にITエンジニアにとって、パイプの理解と使いこなしはスクリプト作成やシステム設計の要とも言えます。
実際の現場でも、効率的なデータ処理や非同期通信の手段として日々活用されています。