可逆圧縮(lossless compression)は、データ圧縮の手法の中で、元のデータを一切毀損することなく、完全に元通りに復元できる技術です。
この圧縮方式は、特に重要なデータを取り扱う場合や完全なデータの再現が求められる場面で使用されます。
本記事では、可逆圧縮の基本的な概念、主要なアルゴリズム、そしてその利用シーンについて詳しく解説します。
可逆圧縮の基本概念
可逆圧縮とは
可逆圧縮は、データ圧縮の過程で元の情報を完全に保存し、圧縮したデータを展開(解凍)したときに元のデータと完全に一致する圧縮方法です。
この技術は、テキストデータやプログラムコードなど、一部のデータが失われるとその内容が変わってしまうようなケースで特に重要です。
可逆圧縮と非可逆圧縮の違い
非可逆圧縮(lossy compression)とは、人間の視覚や聴覚が感じにくい部分を省略することで圧縮率を高める技術です。
これに対して、可逆圧縮は元のデータを完全に保持しますが、圧縮率は通常非可逆圧縮よりも低い傾向があります。
可逆圧縮の主要なアルゴリズム
ランレングス符号(Run-Length Encoding, RLE)
ランレングス符号は、連続する同じデータがどれだけ続くかを記録する圧縮方式です。
例えば、連続した「AAA」のようなデータを「A3」と表現します。
非常に単純でありながら、特定のパターンに対しては効果的です。
ハフマン符号(Huffman Coding)
ハフマン符号は、データの頻出度に応じて可変長のコードを割り当てる圧縮方式です。
頻繁に現れるデータには短いコード、少ないデータには長いコードを使うことで圧縮効率を高めます。
これにより、データの全体的なサイズが小さくなります。
LZ77、LZSS、LZW
- LZ77(Lempel-Ziv 77)は、データ内の繰り返しを探し、以前に出現したデータの参照として圧縮します。
- LZSS(Lempel-Ziv-Storer-Szymanski)はLZ77の改良版で、より効率的な圧縮を実現します。
- LZW(Lempel-Ziv-Welch)は、データ内のパターンを辞書に登録し、それを参照することで圧縮します。GIFやZIPファイルなどで使用されています。
可逆圧縮の利用例
ファイル圧縮形式
ZIPやRAR、gzip、bzip2などのファイル圧縮形式はすべて可逆圧縮を使用しています。
これにより、圧縮前のデータと完全に一致するファイルを再生成することができます。
画像フォーマット
画像圧縮の分野では、JPEGが非可逆圧縮を使用する一方で、PNGやGIF、WebPの一部のオプション、Lossless JPEGなどは可逆圧縮を用いています。
これにより、画像の品質を完全に保持しつつ、ファイルサイズを削減することができます。
音声圧縮
音声データの圧縮では、ALAC(Apple Lossless Audio Codec)、FLAC(Free Lossless Audio Codec)、WMA Losslessなどが可逆圧縮を採用しています。
これにより、音質を損なうことなく圧縮が可能です。
これらは「ロスレス音源」と呼ばれ、高音質を要求される音楽ファイルで使用されます。
まとめ
可逆圧縮(lossless compression)は、データの完全な再現が求められる場合に適した圧縮技術です。
元のデータを一切損なうことなく、圧縮と展開が可能であるため、特に重要なデータの保存や伝送において不可欠です。
主な圧縮アルゴリズムには、ランレングス符号、ハフマン符号、LZ77、LZSS、LZWなどがあります。
また、画像や音声ファイルでも可逆圧縮が利用されており、それぞれの分野での活用が進んでいます。
可逆圧縮の理解を深めることで、データ管理や通信の効率を高めることができます。