耐障害性(フォールトトレランス)**は、システムや機器が一部の故障や障害が発生しても、稼働を続行できる能力を意味します。
この性質は、ITインフラの信頼性を確保するために不可欠であり、システムダウンを防ぐための設計や対策が求められます。
本記事では、耐障害性の基本概念や具体的な実装方法について詳しく解説します。
耐障害性の基本概念
耐障害性とは?
耐障害性とは、システムの一部が故障しても他の部分で代替し、機能を維持する設計のことです。
障害が発生することを前提に、重要な要素を冗長化することで、システム全体の安定性と可用性を確保します。
耐障害性と関連する概念
- フェイルソフト(Fail Soft): 問題が発生しても性能を一部制限しながら稼働を継続する方法。
- フェイルセーフ(Fail Safe): 障害発生時にシステムを安全な状態に移行する設計。
- フールプルーフ(Foolproof): 誤操作が発生しても、危険な状態にならないような安全対策。
耐障害性の具体的な実装例
ハードウェアの冗長化
耐障害性を高めるためには、システムの重要な要素を冗長化することが一般的です。
以下に代表的な例を挙げます。
電源装置の二重化
コンピュータシステムでは、電源装置を二重化することで、一方の電源が故障してもシステムが停止しないようにします。
この手法は、データセンターやサーバールームなど、高可用性が求められる環境で広く採用されています。
通信回線の多重化
複数の通信回線を持つことで、片方の回線が不通になってももう一方で通信を継続できます。
例えば、データセンターでは、異なる経路を持つ通信回線を導入することで、外部との接続が途切れるリスクを軽減します。
ソフトウェアの耐障害性対策
フェイルオーバー機能
システムが一部のサーバーやデバイスの故障を検知した際に、別のサーバーやデバイスに自動的に切り替える機能を指します。
フェイルオーバーによって、障害の影響を最小限に抑え、ユーザーへの影響を回避できます。
クラスタリング
複数のサーバーを一つのクラスターとして動作させることで、一部のサーバーがダウンしても他のサーバーがその役割を代替します。
この方法は、特にデータベースサーバーなど、重要な業務システムで利用されることが多いです。
耐障害性の制限と課題
耐障害性の限界
どれほど設計が優れていても、システムが永続的に稼働し続けることは困難です。
例えば、発電機を備えたビルでも、燃料の備蓄が限られており、長期間の停電には対応できない場合があります。
また、障害が拡大する場合、稼働を続けても機能や性能が低下することもあります。
コストと複雑性の増加
耐障害性の向上にはコストの増加やシステムの複雑化が伴います。
冗長化したハードウェアやソフトウェアの導入、管理が必要になるため、リソースの効率的な運用が求められます。
耐障害性とフォールトアボイダンスの違い
フォールトアボイダンスとは?
フォールトアボイダンスは、システムや機器が故障を予防するための設計です。
耐障害性が「障害を許容しつつ稼働を続行する」ことに焦点を当てているのに対し、フォールトアボイダンスは「障害そのものを未然に防ぐ」ことを目指します。
フォールトアボイダンスとフォールトトレランスの連携
最適なシステム設計では、フォールトトレランスとフォールトアボイダンスを組み合わせることで、システムの信頼性と可用性を最大化します。
例えば、定期的なメンテナンスやモニタリングにより、潜在的な故障を予防しつつ、障害が発生しても迅速に対処できる仕組みを構築します。
まとめ
耐障害性は、ITシステムの信頼性と可用性を高めるための重要な設計要素です。
電源や通信回線の冗長化、ソフトウェアによるフェイルオーバー、クラスタリングなど、多くの技術が耐障害性の向上に寄与します。
ただし、耐障害性の向上にはコストや設計の複雑化が伴うため、適切なバランスを見つけることが求められます。