**近隣探索プロトコル(NDP、Neighbor Discovery Protocol)**は、IPv6ネットワークにおける基本的な通信プロトコルであり、端末間の相互通信を可能にするための重要な役割を担っています。
ICMPv6上に実装され、IETFによってRFC 4861として標準化されています。
本記事では、NDPの概要、機能、そしてIPv4のARP(Address Resolution Protocol)との違いについて詳しく解説します。
近隣探索プロトコル(NDP)の概要
**近隣探索プロトコル(NDP)**は、IPv6ネットワーク内で通信可能な近隣の端末を発見し、ネットワーク層での通信に必要な情報を収集するためのプロトコルです。
NDPは、イーサネット(Ethernet)やWi-Fiなどのリンク層で通じる機器を探し出し、通信設定やアドレス解決などの機能を提供します。
NDPは、IPv4ネットワークで使用される**ARP(Address Resolution Protocol)**や手動設定に代わるもので、以下のような主要機能を提供しています。
NDPの主要機能
1. ルータ発見(Router Discovery)
ルータ発見は、ネットワーク上のルータを自動的に発見する機能です。
これにより、IPv6端末はネットワークのルータから重要な設定情報を取得することができます。
ルータ発見を通じて、端末はルータの存在を知り、ネットワークの構成情報を自動的に取得することができます。
- 例: ネットワーク接続時にルータから自動的にIPアドレス設定を受け取るプロセス。
2. パラメータ発見(Parameter Discovery)
パラメータ発見は、ネットワーク設定に関連する情報を収集するための機能です。
具体的には、MTU(Maximum Transmission Unit)などの最適な通信設定を調べる役割を果たします。
これにより、通信の効率が向上し、ネットワークのパフォーマンスが改善されます。
- 例: 通信パスのMTUサイズを確認し、データの断片化を防ぐ設定。
3. 次ホップ決定(Next-hop Determination)
次ホップ決定機能は、パケットが送信されるべき次のノードを決定するために使用されます。
このプロセスにより、パケットが正しい宛先に向かって転送されることが保証されます。
- 例: ルータが最適な経路を選択してパケットを転送する際の機能。
4. 近隣到達不能検出(NUD:Neighbor Unreachability Detection)
近隣到達不能検出は、近隣の端末が利用できるかどうかをチェックする機能です。
これにより、ネットワーク内で通信が途絶えた場合に迅速に検出し、対応することができます。
- 例: 通信が失敗した場合に再送信を試みるプロセス。
5. リダイレクト(Redirect)
リダイレクト機能は、ルータが端末に対して最適な次ホップの情報を提供するために使用されます。
これにより、通信の効率を向上させることができます。
- 例: ルータが端末に対して新しい経路情報を提供し、通信経路を最適化する。
アドレス設定と解決
1. プレフィックス発見(Prefix Discovery)
プレフィックス発見は、ネットワークのプレフィックス(アドレス範囲)を調べる機能です。
これにより、端末は自動的にネットワークのアドレス範囲を把握し、自身のアドレスを設定します。
- 例: 新しい端末がネットワークに接続する際に、ネットワークのアドレス範囲を自動的に取得する。
2. アドレス自動設定(Address Autoconfiguration)
アドレス自動設定は、端末が自動的にIPv6アドレスを設定するための機能です。
これにより、手動での設定が不要となり、ネットワークの管理が簡単になります。
- 例: 端末がネットワークに接続した際に、自動的に有効なIPv6アドレスを取得する。
3. アドレス解決(Address Resolution)
アドレス解決は、IPv6アドレスから対応するMACアドレスを調べる機能です。
これにより、通信パケットが正しいデバイスに送信されることが保証されます。
- 例: IPアドレスを基に、デバイスの物理アドレスを特定する。
4. 重複アドレス検出(DAD:Duplicate Address Detection)
重複アドレス検出は、ネットワーク内で同じアドレスが重複していないかをチェックする機能です。
これにより、アドレスの重複による通信エラーを防ぎます。
- 例: 新しい端末がネットワークに参加する際に、他の端末と同じIPアドレスがないか確認する。
まとめ
**近隣探索プロトコル(NDP)**は、IPv6ネットワークの通信において重要な役割を果たすプロトコルです。
NDPは、端末間のアドレス解決や通信設定、ネットワーク管理の効率を向上させるために、多くの機能を提供します。
IPv4のARPに代わるNDPの理解と活用は、IPv6ネットワークの構築と運用において不可欠です。
さらに参考してください。