シリアルケーブル(serial cable)は、コンピュータと周辺機器または通信機器を接続するために使用される重要なインターフェースケーブルです。
レガシーな通信手段ではありますが、現在でも工場設備、組込み機器、通信機器の設定などで広く使われているため、その理解はITエンジニアにとって欠かせません。
本記事では、シリアルケーブルの基礎から、RS-232C規格、D-Subコネクタの種類、ヌルモデムケーブルとの違いなどを詳しく解説します。
通信トラブルを防ぎ、正しい接続を行うための知識をしっかり身につけましょう。
シリアルケーブルとは?
シリアル通信の基本
シリアル通信は、1本の通信線で1ビットずつデータを送信する通信方式です。
これに対してパラレル通信は複数ビットを同時に送信します。
シリアル通信は配線が少なくコストが安価であるため、長距離通信や制御機器との接続に適しています。
シリアルケーブルの役割
シリアルケーブルは、コンピュータのシリアルポート(通常はRS-232C準拠)と、プリンタ、モデム、POS端末、産業機器などの周辺機器を接続します。
通常のシリアルケーブルは「ストレートケーブル」とも呼ばれ、端子の信号線がそのまま同じピン番号で結線されているのが特徴です。
RS-232CとD-Subコネクタ
RS-232Cとは?
RS-232Cは、EIA(米国電子工業会)によって定義されたシリアル通信の規格で、低速・短距離の通信に適しています。
多くのシリアルケーブルはこのRS-232Cに準拠しています。
よく使われるコネクタの種類
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D-Sub 9ピン(DE-9)
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一般的なPCのシリアルポートで多く採用。
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ピン数が少ない分、コンパクトで扱いやすい。
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D-Sub 25ピン(DB-25)
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より多くの信号線をサポートし、旧式のモデムやプリンタとの接続に使用されていました。
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ヌルモデムケーブルとは?
ヌルモデムケーブルの定義
ヌルモデムケーブル(null modem cable)は、同じ種類の機器(例:PC同士、モデム同士)を接続するための特殊なシリアルケーブルです。
内部配線がクロス(交差)しており、送信(Tx)と受信(Rx)のラインが入れ替わっているのが特徴です。
ストレートケーブルとの違い
実用例
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デバッグ時のPC間通信
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旧型POS端末と制御機器の直結
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モデムの双方向接続実験
このように、ヌルモデムケーブルは開発やテスト、通信設定の場面で特に役立ちます。
シリアルケーブルの活用例と現代での利用シーン
工業分野での使用
多くの産業機械やFA機器(Factory Automation)は、今でもRS-232Cベースのシリアル通信で制御されています。そのため、保守作業や設定変更にはシリアルケーブルを使用した接続が必須です。
組み込み開発での活用
組み込み開発では、デバイスとのシリアルモニタリングやファームウェアのアップデートを行うため、USB-シリアル変換器と共に使われるケースが多いです。
現代環境での代替手段
現在では多くのPCに物理的なシリアルポートが搭載されていないため、USB-Serial変換アダプタが一般的に用いられています。
これにより、現代のノートPCでもシリアル通信が可能になります。
まとめ
本記事では、シリアルケーブル(serial cable)の基礎から、RS-232C、D-Subコネクタ、ヌルモデムケーブルの仕組みと違いについて詳しく解説しました。
主なポイントは以下の通りです:
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シリアルケーブルは1ビット単位で通信するためのケーブルで、主にRS-232C規格に基づく。
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D-Sub 9ピンや25ピンのコネクタが主に使用される。
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通常のシリアルケーブル(ストレート)と、同種機器を接続する**ヌルモデムケーブル(クロス)**では内部結線が異なる。
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現代でも、工業用途や組み込み開発、機器設定などで重要な役割を果たしている。
正しいケーブルを選び、用途に応じた接続を行うことで、通信エラーを未然に防ぎ、効率的なシステム運用を実現できます。
シリアル通信の基礎知識として、本記事をぜひ役立ててください。