現代の企業ネットワークでは、外部からのサイバー攻撃や不正アクセスに対して多層防御が不可欠です。
その中で登場する用語のひとつが「バリアセグメント(Barrier Segment)」。
バリアセグメントは、内部ネットワークと外部ネットワークの間に位置する特別な領域で、ネットワークセキュリティを設計する上で重要な役割を果たします。
本記事では、バリアセグメントの定義や機能、DMZとの違い、具体的な構成例などを詳しく解説します。
バリアセグメントとは?
ネットワーク構成におけるバリアセグメントの位置付け
バリアセグメントとは、インターネットなどの外部ネットワークと内部ネットワークの中間に配置されるネットワーク領域です。
一般的には、境界ルータの内側で、かつファイアウォールの外側に存在します。
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境界ルータとファイアウォールの間に位置
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セキュリティ的には「防御なし」または「最低限の制御のみ」
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外部ネットワークから直接アクセス可能
バリアセグメントの目的と役割
この領域の主な目的は、最前線でトラフィックを受け入れるバッファゾーンとして機能することです。
内部ネットワークへの攻撃を一時的に吸収・遮断することで、内部リソースの保護に貢献します。
DMZとの違いは?
DMZ(DeMilitarized Zone)とは?
DMZ(非武装地帯)は、外部からのアクセスが許可された公開用サーバ(Webサーバ、DNSサーバ、メールゲートウェイなど)を配置するためのセグメントです。
特徴:
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ファイアウォールの内側に構成されるが、外部アクセスが可能
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DMZと内部ネットワークの間に二段階のファイアウォールを配置
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アクセス制御が厳格で、通信ポリシーの詳細設計が必要
バリアセグメントとDMZの比較表
バリアセグメントの活用例
DMZを設けない構成での使用
DMZを設けずにバリアセグメントを使用する場合、公開サーバ(Webサーバ等)をこのセグメントに直接配置します。
この構成は中小規模のネットワークでよく見られますが、セキュリティリスクは比較的高くなるため、注意が必要です。
境界機器のシンプル構成
ネットワーク機器が限られている環境では、ルータとファイアウォールの直結によりバリアセグメントを形成し、そこに一切のサービスを設置しない構成もあります。
これは、DMZを採用せずに、防御ラインを単純化する設計です。
セキュリティ上の注意点
公開用サービスの配置にはリスクあり
バリアセグメントにサーバを設置する場合、外部からの直接アクセスが無制限に可能となるため、厳重なセキュリティ対策が不可欠です。
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不要なポートの閉鎖
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IDS/IPS(侵入検知・防御システム)の導入
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OSやソフトウェアの常時アップデート
DMZとの併用を推奨
大規模またはセキュリティ要求の高いシステムでは、DMZの導入を基本とし、バリアセグメントを極力スリム化する構成が推奨されます。
まとめ
バリアセグメントは、ネットワークの境界におけるセキュリティ設計の要素のひとつであり、外部との接点となる領域です。
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境界ルータとファイアウォールの間に配置され、外部からの接続が可能
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DMZとは異なり、内部と分離された安全地帯ではない
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セキュリティ設計においては用途と規模に応じてDMZとの併用が理想的
ネットワークセキュリティを構築する上で、バリアセグメントの正しい理解と適切な使い分けが、安全で柔軟なインフラ設計の鍵となります。