ビジネスやITの現場で「どの問題から解決すべきか?」と悩んだことはありませんか?
そんなときに役立つのが、パレート図(Pareto chart)です。
パレート図は、項目を大きい順に並べた棒グラフと累積比率の折れ線グラフを組み合わせた可視化ツールで、「重要な少数」に着目して優先度を明確にします。
この記事では、パレート図の仕組み・作り方・応用例について、IT・品質管理・業務改善の観点からわかりやすく解説します。
パレート図とは何か?
パレート図の基本構成
パレート図(Pareto chart)とは、以下の2つの要素を組み合わせた複合グラフです:
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棒グラフ:個々の項目を大きい順(降順)に並べて表示
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折れ線グラフ:各項目の累積構成比(%)を示す
これにより、全体における各項目の貢献度や、どこまで対処すれば目標を達成できるかを視覚的に把握できます。
パレート図の理論的背景:パレートの法則
この図は、19世紀末の経済学者ヴィルフレード・パレートの名に由来しています。
彼の提唱した「パレートの法則(80:20の法則)」に基づき、全体の80%の結果は20%の原因から生じるという考え方がベースです。
ITや業務改善の現場でも、「エラーの8割は2割の機能に集中している」といった現象がしばしば観察され、パレート図はその分析に最適な手法とされています。
パレート図の作り方と読み方
基本的な作成ステップ
ステップ1 – データの収集
例えば、ソフトウェアのバグ件数をモジュール別にカウントする、または問い合わせ内容のカテゴリ別件数を整理するなど、分類された定量データを用意します。
ステップ2 – 降順に並び替える
件数の多い順に項目を並べて、最も影響の大きい要素が左に来るようにします。
ステップ3 – 各項目の構成比・累積比を算出
項目ごとの全体に対する構成比(%)と、それらの累積比を計算します。
ステップ4 – グラフ作成
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棒グラフ:各項目の件数
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折れ線グラフ:累積構成比(右軸を使用)
読み方のポイント
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80%ラインと交差する点を探すことで、「どこまでを優先的に対処すれば良いか」が明確になります。
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例えば「最初の3項目で全体の75%を占める」なら、それらが最優先課題です。
IT現場におけるパレート図の応用例
ソフトウェア開発
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バグ解析:バグが集中する機能やモジュールを特定
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コードレビュー優先度の決定:特にエラー頻出箇所を重点的にチェック
インフラ運用
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アラート発生件数の分析:頻度の高い原因に対策を集中
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障害要因の特定:ヒューマンエラー・ハード障害などの比率を視覚化
ヘルプデスク・カスタマーサポート
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問い合わせ内容の傾向分析
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FAQやマニュアル改善の指針に活用
品質管理(QA)
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不良品原因の分析(製造業)
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顧客クレームの優先順位付け
パレート図のメリットと限界
メリット
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視覚的に直感的な分析が可能
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問題の優先順位付けが明確
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意思決定にスピードと説得力を与える
限界・注意点
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定量データが前提:定性的な情報には不向き
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原因と結果の関係を直接示すわけではない
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グラフの解釈が誤った判断を誘導することもあるため、他の分析手法と併用することが望ましい
まとめ
パレート図(Pareto chart)は、IT業界を含むさまざまな分野で、優先順位の可視化やリソースの最適配分を支援する非常に有効なツールです。
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「重要な少数を特定する」ことで、効果的な問題解決が可能になる
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ソフトウェア開発、運用、QA、カスタマーサポートなど、幅広い領域で応用されている
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正確なデータ分析と組み合わせることで、実用的かつ再現性の高い改善活動を支援
パレート図を活用することで、あなたのチームやプロジェクトの生産性・品質を大きく向上させることができるでしょう。