ヒープ(Heap)は、プログラミングやアルゴリズム設計、システム開発などで非常に重要な概念です。
ヒープという言葉は、主に以下の2つの意味で使われます:
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データ構造としてのヒープ(ヒープツリー)
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メモリ領域としてのヒープ(ヒープメモリ)
本記事では、それぞれの定義・特徴・活用例・混同しやすいポイントなどを専門的に解説し、IT技術者や学生、開発者の理解を深めることを目的としています。
ヒープとは何か?2つの意味を正しく理解しよう
データ構造としてのヒープ(ヒープツリー)
ヒープツリーの定義と特徴
ヒープは、完全二分木(完全に詰まった木構造)において、「親ノードが子ノードより常に大きい(または小さい)」という条件を満たすツリー構造です。
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最大ヒープ(Max-Heap):親ノード ≥ 子ノード
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最小ヒープ(Min-Heap):親ノード ≤ 子ノード
この性質により、ルートノードには常に最大(または最小)値が位置するという特徴があります。
配列による実装とその利点
ヒープはポインタによるノード参照ではなく、配列(Array)で実装可能である点が大きな利点です。
例えば、あるノードのインデックスが i
であるとき:
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左の子:
2i + 1
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右の子:
2i + 2
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親:
(i - 1) / 2
これにより、実装が簡易でメモリ管理も効率的です。
ヒープソートにおける応用
ヒープソート(Heap Sort)は、ヒープの構造を活かして整列(ソート)を行うアルゴリズムです。
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時間計算量:O(n log n)
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安定性:非安定ソート
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長所:再帰処理なしでも構築可能で、最大値/最小値の取得が高速
例:
大量の数値をソートする場面や、優先順位付きの処理(タスク管理など)で活用されます。
メモリ管理におけるヒープ(ヒープメモリ)
実行時に確保・解放されるメモリ領域
ヒープメモリは、プログラムの実行中に動的にメモリを確保・解放できる領域です。
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ヒープはスタックメモリと対比される領域
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C/C++では
malloc()
やnew
で確保し、free()
やdelete
で解放 -
JavaやPythonなどでは、ガーベジコレクタ(GC)が自動で管理
ヒープメモリの用途と注意点
用途:
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動的な配列やリスト、オブジェクトの生成
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長期間保持されるデータ管理
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サイズが可変のデータ構造
注意点:
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メモリリーク(解放忘れ)やダングリングポインタの危険性
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適切なメモリ管理が求められる
データ構造のヒープとメモリのヒープの違い
文脈によって「ヒープ」の指す対象が異なるため、理解と使い分けが重要です。
実際の開発でのヒープの活用事例
ソフトウェア開発におけるヒープの実用例
例① 優先度付きキュー(Priority Queue)
OSやスケジューラなどで、優先度に基づくタスク管理が求められる場面では、ヒープを用いた優先度付きキューが不可欠です。