メインフレーム(mainframe)は、かつて“コンピュータ”といえばこれを指すほど圧倒的な存在感を持っていました。
現在ではクラウドや分散システムの普及により影が薄くなったものの、金融機関・官公庁・大企業の基幹システムでは今なお重要な役割を担っています。
本記事では、メインフレームの仕組み・特徴・歴史的背景・現在の活用状況までを、ITエンジニア向けに深掘り解説します。
メインフレームとは?
メインフレームの基本定義
メインフレーム(大型汎用機)とは、多数のユーザーや業務処理を同時にこなすために設計された高性能・高信頼性の大型コンピュータです。
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主に大企業や政府機関などの基幹業務システムで利用
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数百~数千の同時アクセスに対応
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高い可用性・耐障害性を持つ
例:金融システム、航空予約、年金管理、税務処理 など
構成要素
一般的な構成は以下の通り:
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ホストコンピュータ本体:処理・記憶・入出力を担う中枢装置
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端末(ターミナル):利用者が操作するインターフェース
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冗長構成:CPU、電源、記憶装置が冗長化されており、障害時にも稼働継続可能
メインフレームの技術的特徴
1. 高可用性(High Availability)
メインフレームは停止しないことが前提で設計されています。
電源やストレージ、通信経路の二重化が標準で、OSやアプリケーションもホットスタンバイ構成が可能です。
2. 高スループット処理
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数万件/秒のトランザクション処理能力
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膨大なバッチ処理を夜間に自動実行
3. セキュリティ・アクセス制御
メインフレームはハードウェア・OSレベルでの強力なセキュリティ機構を備えています。
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アクセス制御リスト(ACL)
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ユーザー認証の多層化
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ロールベースの権限管理
例:金融業界ではPCI DSSやFISCガイドライン対応にも利用
メインフレームのソフトウェアとOS
専用OSの利用
多くのメインフレームでは、メーカー独自のオペレーティングシステムが動作しています。
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IBM:z/OS、z/VSE
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富士通:OSIV/MSP、OSIV/XSP
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日立:VOS3
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NEC:ACOSシリーズ
これらのOSは、長年にわたり蓄積された基幹業務向けの機能に特化しています。
導入と運用の形態
パッケージ型導入
メインフレームは基本的に、ハードウェア・OS・ミドルウェア・業務アプリケーションまでを含む一体型パッケージとして導入されます。
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メーカーが一括提供する「垂直統合型」
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インテグレータが構築・納品するケースも多い
カスタム開発の多さ
業務内容に合わせてゼロからアプリケーションを開発するケースが一般的です。
そのため、業務の深い理解と専門SEの確保が重要になります。
メインフレームの歴史と現代における位置づけ
過去:すべての“コンピュータ”はメインフレームだった
1980年代以前、メインフレームは唯一の選択肢として、全業界に広く導入されていました。
PCやサーバが普及するまで、“コンピュータ”=メインフレームという時代が長く続きました。
現在:分散型システムとの共存
クラウドや分散システムが登場し、コストや柔軟性の面では代替可能な場面も増えています。
しかし、以下の点から依然として利用価値があります:
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長寿命・高信頼性(10年以上の運用も一般的)
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過去の業務システムとの互換性
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セキュリティ基準の高さ
例:メガバンクの勘定系システムなどは依然としてメインフレーム中心
主なメインフレームメーカー
現在、メインフレームを製造・販売しているのは世界でも限られた企業のみです。
世界シェアではIBMが圧倒的ですが、日本市場では富士通・NEC・日立の国産ブランドが根強い人気を持っています。
メインフレームの活用例
1. 金融・保険業界
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勘定系システム
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保険契約管理
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顧客マスタ・取引履歴管理
2. 官公庁・自治体
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年金管理システム
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住民基本台帳
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税務情報管理
3. 大手製造・流通業
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生産管理
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在庫・受発注システム
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サプライチェーン統合管理
まとめ
メインフレーム(mainframe)は、現代のクラウド・分散アーキテクチャと比較しても、高信頼性・高可用性・一貫性ある運用という観点で未だに替えが利かない存在です。
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大量データ処理や厳格な業務要件を求める業界では今も第一線
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技術者不足や保守性の課題もあるが、逆に専門知識の価値が高まっている
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これからも既存資産との連携やモダナイゼーションがカギに
レガシーと思われがちなメインフレームですが、業務基盤を支える“現役の主役”として、今なお強い存在感を放ち続けています。