共通鍵暗号(Common Key Cryptosystem)は、暗号化と復号に同一の鍵(秘密鍵)を使用する暗号方式です。
情報セキュリティの基本ともいえるこの技術は、データ通信の安全性を守る上で不可欠な存在です。
本記事では、共通鍵暗号の仕組みや代表的なアルゴリズム、公開鍵暗号との違い、そして現代における実践的な使い方までを、ITの専門的な視点で詳しく解説します。
共通鍵暗号とは?
共通鍵暗号の基本構造
共通鍵暗号(または対称鍵暗号)とは、暗号化と復号に同じ鍵を使用する方式です。
送信者と受信者が事前に安全な経路で鍵を共有しておく必要があるのが特徴です。
仕組みの概要:
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平文(plaintext):暗号化前の元データ。
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共通鍵(shared key):暗号化と復号に使う同一の鍵。
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暗号文(ciphertext):共通鍵と暗号アルゴリズムで変換されたデータ。
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復号(decryption):同じ鍵を用いて、暗号文を元の平文に戻す処理。
🔑 例:AさんがBさんに機密情報を送る際、あらかじめUSBで渡しておいた秘密鍵を使って暗号化・復号を行う。
暗号アルゴリズムと鍵の重要性
暗号アルゴリズムは公開されているのが一般的で、セキュリティは鍵の強度(特に長さ)に依存します。
現代では、64〜256ビット以上の長さを持つ鍵が使用され、安全性が高まっています。
ブロック暗号とストリーム暗号の違い
共通鍵暗号には、大きく2つのタイプがあります。
ブロック暗号(Block Cipher)
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データを固定長(例:128ビット)に分割し、それぞれのブロックごとに暗号化。
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代表的な方式:DES、AES。
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処理が安定しており、ファイルの暗号化などに向いています。
ストリーム暗号(Stream Cipher)
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データを1ビットまたは1バイト単位で連続的に暗号化。
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代表的な方式:RC4。
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通信データのリアルタイム暗号化に最適です(例:音声通話など)。
🧠 実用例:ストリーム暗号はオンラインゲームやVoIPアプリなどリアルタイム性が求められる環境で使用されます。
共通鍵の課題とセキュアな共有方法
鍵配布のジレンマ
共通鍵暗号の最大の課題は、鍵をどうやって安全に相手と共有するかです。
具体的な課題:
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多人数との通信では、鍵の数が膨大になる。
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鍵が漏洩すれば、すべての通信が危険に晒される。
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手動配布は非効率でスケーラビリティが低い。
解決策:ハイブリッド暗号方式
この課題を解決するために用いられているのが、公開鍵暗号との併用です。
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公開鍵暗号を使って共通鍵を安全に交換。
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実際のデータは共通鍵で高速に暗号化。
この方式は「ハイブリッド暗号」と呼ばれ、SSL/TLS、VPN、暗号化メールなどで一般的に利用されています。
代表的な共通鍵暗号方式
DES(Data Encryption Standard)
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1977年、IBMにより開発され、米国標準規格に。
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56ビットの鍵長を使用。
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現代ではセキュリティが不十分とされる。
AES(Advanced Encryption Standard)
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2000年、DESの後継として採用。
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Rijndaelアルゴリズムを基にした強力な暗号方式。
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鍵長:128/192/256ビット対応。
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現在最も広く使用されている共通鍵暗号方式。
RC4(Rivest Cipher 4)
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ストリーム暗号の代表例。
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SSL/TLSなどでかつて使用されたが、近年は脆弱性の指摘あり。
公開鍵暗号との違い
現代の暗号化通信は、これら2方式の長所を組み合わせたハイブリッド構成で構築されており、セキュリティとパフォーマンスを両立しています。
まとめ
共通鍵暗号は、ITセキュリティにおける基本技術のひとつであり、そのシンプルかつ高速な特性から、今なお多くのシステムで使用されています。
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同一鍵を使って暗号化・復号を行う。
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鍵の安全な共有が課題であり、公開鍵暗号との組み合わせが重要。
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AESやRC4などの代表的な方式が存在。
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ハイブリッド暗号としての活用が主流。
これらの理解は、エンジニアにとってもシステム設計者にとっても不可欠です。
ITセキュリティの基礎を固めるためにも、ぜひ覚えておきたい知識です。