近年、クラウドサービスや動画配信、リモートワークの普及により、ネットワークのトラフィック管理の重要性が急速に高まっています。
中でも「シェーピング(shaping)」は、ネットワーク帯域を効率的に利用するために欠かせない帯域制御技術です。
本記事では、トラフィックシェーピングの仕組み、ポリシングとの違い、活用シーン、メリット・デメリットをわかりやすく解説し、ネットワークエンジニアやIT管理者にとって役立つ知識を提供します。
シェーピングとは?
トラフィックの平準化を実現する帯域制御
シェーピングとは、通信量が一定の閾値(スループット)を超えた際に、その超過分のデータを通信機器の内部に一時保存(キューイング)し、ネットワークに余裕ができたタイミングで送信する制御方式です。
英語で「shaping」は「形を整える」という意味で、データの流れを時間軸に沿って整えることに由来します。
特徴と仕組み
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通信容量の上限を設定
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超過データはキューに一時保存
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帯域に余裕があるタイミングで後送
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パケットの破棄なし(原則)
シェーピングの仕組みを技術的に解説
シェーピングとキューの役割
通信量の閾値設定とデータ送信の流れ
シェーピングでは「CIR(Committed Information Rate)」や「MBS(Maximum Burst Size)」などの設定値を基に、一定の帯域幅を超えないよう通信を制御します。
超えた分はバッファ(FIFOキュー)に溜められ、トークンバケット方式などを利用して管理されます。
実装レイヤー
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レイヤー2(データリンク層):スイッチなどでシェーピングを適用
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レイヤー3(ネットワーク層):ルーターなどでQoS設定と連携
シェーピングのメリットとデメリット
シェーピングの利点
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帯域の安定化:トラフィックのピークを抑制
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通信の公平性確保:複数のセッションを均等に処理
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パケット損失を回避:即座に破棄せず後送可能
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QoS(Quality of Service)に寄与
シェーピングの課題
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遅延の増加:キューが長くなると待機時間が増える
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リアルタイム通信に不向き:VoIPやオンラインゲームなど
シェーピングとポリシングの違い
二つの帯域制御技術の比較
シェーピングの活用シーンと例
例1:企業ネットワークのトラフィック調整
複数拠点間をVPNで接続している企業が、業務アプリケーションの通信量を確保するためにシェーピングを導入。バックアップ通信などの非リアルタイムデータを制限し、業務優先通信を安定させる。
例2:ISPによる家庭用帯域制御
インターネットサービスプロバイダが、ピーク時間帯に動画ストリーミングトラフィックを一時的に制御することで、ネットワーク全体の品質を維持。
トラフィックシェーピングとITインフラの未来
ネットワークの高速化とともに、従来のベストエフォート型通信から、より品質保証された通信(QoS)へのニーズが高まっています。
5GやIoT、クラウドサービスの拡大に伴い、シェーピングのような帯域制御技術の高度化と自動化がますます重要になります。
まとめ
シェーピング(shaping)は、ネットワークトラフィックを効率的かつ安定的に制御するための基本技術です。
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トラフィック量を平準化することで、ネットワークの混雑を緩和
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キューによる一時保存でパケット損失を抑制
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リアルタイム性には課題があるため、適用対象に注意が必要
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ポリシングとの違いを理解することで、より効果的なネットワーク設計が可能
ネットワーク管理者やITインフラ担当者にとって、トラフィックシェーピングの理解と活用は、今後ますます不可欠なスキルとなるでしょう。