ゲーム理論(game theory)は、複数の主体(個人、組織、生物など)が互いに影響し合う状況での意思決定過程を数理モデルを用いて分析する理論です。
この理論は経済学や応用数学から派生し、現在では政治学、社会学、生物学、工学など多くの分野で応用されています。
本記事では、ゲーム理論の基本概念、種類、そして代表的なパラドクスである囚人のジレンマについて詳しく解説します。
ゲーム理論の基本概念
ゲーム理論は、プレーヤー(主体)が相互に影響を及ぼし合う「ゲーム」を分析します。
プレーヤーの行動選択肢は「戦略」と呼ばれ、これをもとに意思決定が行われます。
戦略は、純粋戦略(pure strategy)と混合戦略(mixed strategy)の2種類に分類されます。
- 純粋戦略: 各プレーヤーが確定的に一つの戦略を選択する方法です。
- 混合戦略: 各プレーヤーが確率的に複数の戦略を選択する方法です。
ゲームの種類
ゲームはさまざまな基準で分類されます。主な分類には以下のようなものがあります。
- 協力ゲーム vs. 非協力ゲーム:
- 協力ゲーム: プレーヤー間で拘束力のある合意が可能で、協力による利得が与えられるゲームです。
- 非協力ゲーム: プレーヤー間で合意が不可能で、各プレーヤーが自分の利得を最大化しようとするゲームです。
- 現実世界の多くの状況はこのカテゴリーに該当します。
- 完全情報ゲーム vs. 不完全情報ゲーム:
- 完全情報ゲーム: すべてのプレーヤーが過去の行動や状態について完全な情報を持つゲームです。
- 例えば、将棋やチェスが該当します。
- 不完全情報ゲーム: プレーヤーの一部が他のプレーヤーの行動や状態について不完全な情報しか持たないゲームです。
- 麻雀やポーカーがこれに当たります。
- 完備情報ゲーム vs. 不完備情報ゲーム:
- 完備情報ゲーム: ゲームのルールや結果が全てのプレーヤーに共有されているゲームです。
- ボードゲームなどが該当します。
- 不完備情報ゲーム: プレーヤーの一部が情報を持っていない状態で行われるゲームです。
- 企業競争などがこれに該当します。
- 零和ゲーム vs. 非零和ゲーム:
- 零和ゲーム: 一方のプレーヤーの利得の増加が他方のプレーヤーの利得の減少に直接連動するゲームです。
- 全員の利得の合計が常にゼロです。
- 非零和ゲーム: 利得の増減が必ずしも連動しないゲームです。
支配と均衡
ゲーム理論における重要な概念には「支配戦略」と「ナッシュ均衡」があります。
- 支配戦略: 他のプレーヤーがどんな行動を取っても、常に最も利得が高くなる戦略です。
- すべてのプレーヤーに支配戦略が存在し、誰も他の選択肢に変更する動機を持たない状態を「支配戦略均衡」と呼びます。
- ナッシュ均衡: 各プレーヤーが他のプレーヤーの行動を考慮し、自らの行動を選択する時、どのプレーヤーもそれ以上高い利得を得ることができない状態です。
- 支配戦略が存在しない場合でもナッシュ均衡に達することがあります。
囚人のジレンマ
囚人のジレンマはゲーム理論の最も有名なパラドクスです。
この状況では、相手の行動が不確定であるにもかかわらず、各プレーヤーが最も合理的な行動を選択することで、結果的に両者にとって最も不利な結果を招くことになります。
例えば、共犯者AとBが検察官から司法取引を持ちかけられたとします。
「両者とも自白すれば、両者とも懲役5年。しかし、両者とも黙秘すれば両者とも懲役2年。片方だけが自白すれば、自白した者は懲役1年、黙秘を続けた方は懲役8年。」この場合、各プレーヤーは相手がどの選択をするか分からないため、最も有利な選択をするつもりでも、結果的に両者が自白することになります。
これが囚人のジレンマです。
まとめ
ゲーム理論は、プレーヤーの意思決定を数理的に解析するための強力なツールです。
協力ゲームと非協力ゲーム、完全情報ゲームと不完全情報ゲーム、支配戦略とナッシュ均衡など、さまざまな概念を理解することで、複雑な意思決定の状況をより良く把握することができます。
また、囚人のジレンマのようなパラドクスは、理論が実際の意思決定にどのように影響するかを示す貴重な例です。
ゲーム理論の知識は、ビジネス、政治、社会など多くの領域で応用可能であり、現代社会における重要なスキルです。
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