コールドバックアップは、企業や組織のITシステムにおいて非常に重要なバックアップ手法の一つです。
この方法は、システムを停止させてデータをバックアップすることで、データの整合性と一貫性を確保することができます。
この記事では、コールドバックアップの基本的な概念、実施方法、メリット・デメリットについて詳しく解説し、その実務での適用方法をご紹介します。
コールドバックアップとは？
コールドバックアップの概要
コールドバックアップとは、バックアップを行う際に、システムやアプリケーションを停止させ、データが変更されない状態でバックアップを実施する手法です。
これは、バックアップ中にシステムでデータが更新されないようにすることで、データの整合性と一貫性を保ちながら、完全なバックアップを取得する方法です。
コールドバックアップは、特にデータベースシステムやファイルサーバなどで使用され、データを安全に保管するために重要な役割を果たします。
この方法では、バックアップを行うためにシステムを停止させる必要があり、そのため、運用においては稼働率や利便性を犠牲にすることがありますが、非常に信頼性の高いバックアップを提供します。
コールドバックアップの実施方法
コールドバックアップを行う際には、まずシステムのアプリケーションやサービスを停止します。
この状態で、データベースやファイルシステムなどの全てのデータをバックアップすることで、整合性のあるデータが保証されます。
具体的には、以下の手順で実施されることが一般的です：
- システムの停止：バックアップを行う前に、対象となるシステム（データベースやアプリケーション）を完全に停止します。
- データのバックアップ：システムが停止している間に、全てのデータを外部のバックアップメディア（ディスクやテープなど）にコピーします。
- システムの再起動：バックアップが完了したら、システムを再起動し、通常の運用に戻ります。
このプロセスによって、バックアップ中にデータが変更されることがなくなり、一貫性のあるバックアップデータを得ることができます。
コールドバックアップの特徴とメリット
データの整合性と一貫性の確保
コールドバックアップの最大の特徴は、システムを停止させてバックアップを行うため、バックアップ中にデータの整合性が損なわれる心配がない点です。
データベースの整合性や一貫性を重視するシステムでは、この方法が非常に有効です。
バックアップ中にデータが変更されないため、特定の時点の完全なデータコピーを取得できます。
低リスクでのバックアップ
コールドバックアップは、システムを停止させて行うため、バックアップ中に発生する可能性のあるデータ不整合や競合状態のリスクを排除できます。
このため、非常に高い信頼性を誇るバックアップ手法と言えます。
法規制や規則に対応
特に金融機関や医療機関などの規制が厳しい業界では、データの整合性を保持することが法律や業界規制で求められることがあります。
このような場合において、コールドバックアップは非常に有効です。
コールドバックアップのデメリット
システム停止による稼働率低下
コールドバックアップを実施するためには、システムやアプリケーションを停止する必要があります。
このため、バックアップ中は業務を行うことができず、システムの稼働率が低下します。
特に、24時間稼働が求められるシステムにおいては、業務の中断が大きなデメリットとなります。
バックアップにかかる時間
システム停止後、全データをバックアップするため、バックアップに時間がかかる場合があります。
データ量が多いと、バックアップの時間が長引き、その間に業務に支障をきたすこともあります。
他のバックアップ手法と比較したコスト
コールドバックアップは、システム停止を伴うため、他のバックアップ方法（ホットバックアップやオンラインバックアップ）と比較してコストが高くなる場合があります。
特に、システム停止の時間を最小限に抑えるために、専用のバックアップ設備や管理が必要となることもあります。
コールドバックアップ vs ホットバックアップ
コールドバックアップとホットバックアップの違い
- コールドバックアップ：システムを停止してバックアップを実施し、データの整合性を完全に保つ。データの変更がないため、バックアップ中のリスクが最小限。
- ホットバックアップ：システムを停止せず、稼働中の状態でバックアップを行う方法。データが変更される可能性があるため、整合性に注意が必要。
ホットバックアップは、バックアップ中もシステムを稼働させることができ、業務の中断を最小限に抑えますが、データ整合性に関してはコールドバックアップほどの保証はありません。
コールドバックアップの使用例
- 金融機関：法規制でデータの整合性を保持する必要があるため、コールドバックアップが一般的に使用されます。
- 医療機関：患者情報など、機密性の高いデータのバックアップにコールドバックアップが使われます。
- データベースシステム：データベースの整合性を維持するために、コールドバックアップが多く使用されます。
まとめ
コールドバックアップは、データ整合性を最優先に考えたバックアップ方法であり、特に高い信頼性を求められるシステムで利用されます。
システムを停止してバックアップを行うため、業務の中断を避けたい場合やリアルタイムでのデータ更新が必要な場合には適していませんが、データの一貫性と整合性を確保する点では最も優れた方法です。
バックアップ手法を選定する際には、システムの要求や運用環境に応じて、コールドバックアップのメリットとデメリットを十分に考慮することが重要です。