ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコルとは?ITエキスパートのための基礎解説

ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコルは、ネットワークのルーティング方法の一つで、隣接ルータ間で経路情報を交換し、効率的なパケットルーティングを実現するための重要な技術です。

主に**RIP(Routing Information Protocol)IGRP(Interior Gateway Routing Protocol)**などのプロトコルに用いられ、ルーティングループの発生や経路の収束における課題もあります。

この記事では、ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコルの仕組みとその利点・課題について詳しく解説します。

 

ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコルの基本

ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコルの概要

ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコルは、隣接するルータ間でルーティングテーブルを交換し、各ルータが最も少ないホップ数で宛先に到達するための経路を自動的に学習する仕組みです。

ルーティングプロトコルとしての実装は比較的容易であり、隣接ルータに経路情報を伝播することでネットワーク全体に伝達されます。

ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコル

動作の流れ

各ルータは、隣接するルータから送られてきた経路情報を元に最短経路を選択し、自身のルーティングテーブルを更新します。

このプロセスは「バケツリレー式」とも呼ばれ、すべてのルータに対して経路情報が共有されるまで継続されます。

例えば、RIPでは最大30秒ごとに隣接ルータとルーティングテーブルを交換し合い、ネットワーク全体の経路情報の更新が行われます。

 

メリットとデメリット

メリット

  • 実装の容易さ

ディスタンスベクタ型は、他のルーティングプロトコルと比べてシンプルなアルゴリズムで構成されており、コストを抑えて実装が可能です。

また、必要な情報量も少なく、ネットワークが小規模であれば十分に効果を発揮します。

  • 自動的な経路学習

新しいネットワークが追加された場合や既存のネットワークに変化があった場合、自動的にルーティングテーブルが更新され、管理負担が少ないのも利点です。

 

デメリット

  • 回線容量への影響

ルータ間で頻繁にルーティング情報を交換するため、ネットワークの帯域を圧迫する可能性があります。

特に大規模なネットワークでは、この通信量が全体のパフォーマンスに悪影響を与えることもあります。

 

  • 収束時間の長さ

経路の変化に対する収束速度が遅く、例えばリンクダウンが発生した際の再収束に時間がかかるというデメリットもあります。

このため、回線の不通区間が発生すると、ネットワーク全体に影響が及びやすくなります。

 

  • ルーティングループのリスク

ディスタンスベクタ型では、ルータ間で無限ループが発生する可能性があります。

これに対処するため、RIPでは「ホップ数の制限」や「スプリットホライズン」などの手法を導入し、ループの発生を防止しています。

 

他のルーティングプロトコルとの違い

リンクステート型ルーティングプロトコルとの比較

ディスタンスベクタ型に対して、リンクステート型ルーティングプロトコルは、各ルータが自身の接続情報(リンク情報)をもとに、ネットワーク全体のトポロジを理解して最適な経路を計算する手法です。

リンクステート型はOSPF(Open Shortest Path First)やIS-ISで採用されており、収束が速い反面、情報量が多いため、ネットワーク資源を多く消費します。

 

ルーティングプロトコルの選択基準

ネットワークの規模や目的に応じて、適切なルーティングプロトコルを選択することが重要です。

小規模ネットワークやシンプルな構成にはディスタンスベクタ型が適しており、大規模ネットワークや収束の速さが重要な場合にはリンクステート型が好まれます。

 

まとめ

ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコルは、隣接ルータ間で経路情報を交換し合い、シンプルかつ自動的にネットワーク全体の経路情報を更新する便利なプロトコルです。

特に小規模ネットワークやコスト重視の環境に適しているものの、回線容量の消費や収束時間、ルーティングループのリスクに注意が必要です。

目的に応じたルーティングプロトコルの選択が、ネットワーク運用の効率向上につながります。

 

さらに参照してください:

Linuxディストリビューションとは?初心者からエキスパートまで理解できる完全ガイド

 

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By jisho5