ネットワークタップ(Network TAP) は、ネットワークのトラフィックを可視化し、安全性とトラブル対策を実現するための不可欠なツールです。
ITインフラの運用監視やフォレンジック調査など、高度なネットワーク管理を行う現場で活躍しています。
本記事では、ネットワークタップの構造や種類、活用例、そして導入のポイントをわかりやすく解説します。
ネットワークタップとは?
監視のための受動的データ複製装置
ネットワークタップとは、ネットワークケーブル間に設置することで、通信データをリアルタイムに監視用ポートにミラーリング(複製)する装置です。
主に以下のような構成で使用されます。
-
2つのポートでネットワーク機器(例:スイッチとサーバ)を中継接続
-
3つ目の監視用ポートから通信内容を別システムに送信
-
パッシブ機器として動作するため、通信内容に影響を与えずに監視が可能
スイッチのポートミラーとの違い
一般的なネットワークスイッチにもポートミラー(SPAN機能)はありますが、以下の違いがあります。
ネットワークタップの構造と仕組み
ポート構成とデータフロー
ネットワークタップには通常、以下のようなポート構成があります。
-
INポート/OUTポート:ネットワーク機器同士を中継
-
モニターポート(受信用):両方向の通信をコピーして送出
このモニターポートにはLANアナライザやIDS/IPSなどの監視機器を接続し、通信内容をリアルタイムに解析できます。
一方向通信の安全性
監視ポートは送信機能を持たない(受信専用)ため、接続された監視機器から本来のネットワークに影響を与えることはありません。
これによりセキュリティリスクを最小限に抑えつつ、正確なトラフィック監視が可能です。
種類別ネットワークタップの特徴
カッパータップ(UTP/STP対応)
-
メタル系LANケーブル(Cat5e/Cat6など)に対応
-
一般的な社内LAN環境で広く利用
-
比較的安価で設置も容易
ファイバータップ(光ファイバー対応)
-
高速通信(1G〜100G)に対応
-
データセンターや大規模ネットワークで必須
-
送受信が物理的に分離されているため、より高い安全性を確保
アグリゲータータップ
-
上り/下り方向の信号を単一の監視ポートに合成
-
モニター機器のポート数が限られている場合に有効
-
特にパケットキャプチャやトラフィック分析に適している
ネットワークタップの活用シーン
セキュリティ監視(IDS/IPS)
-
不正アクセスの兆候を早期発見
-
攻撃トラフィックを可視化して迅速な対応
パケットキャプチャ・トラブル解析
-
ネットワーク遅延やパケットロスの原因調査
-
VoIPやストリーミング品質の分析
法的証拠保全(フォレンジック)
-
情報漏洩調査時の通信証拠として保存
-
サイバー攻撃後の経路追跡やログ補完に活用
導入時の注意点とベストプラクティス
導入前チェックリスト
-
対象ネットワークの通信速度(1G/10G/100Gなど)
-
光/メタルケーブルの種類
-
監視目的(リアルタイム vs ログ取得)
設置場所の選定
-
通信経路の**重要ノード(コアスイッチやファイアウォール)**直前が理想
-
物理的にアクセス可能であること
冗長構成の考慮
-
通信断対策としてフェイルオープン機能を持つ製品の採用
-
アクティブタップ(電源式)では電源二重化を検討
まとめ
ネットワークタップは、ネットワーク監視・セキュリティ・運用管理における高精度・高信頼のデータ取得手段として不可欠な存在です。
スイッチのミラー機能では対応しきれない高度なニーズにも応え、パフォーマンスを落とさずにネットワーク全体を可視化できます。
システム規模や監視目的に応じた適切なタップ製品を選定・設置することで、ネットワーク管理体制を大幅に強化することが可能になります。
ネットワークの安定稼働を支えるインフラ要素として、今後さらに注目が高まるでしょう。