ネットワークライセンス(network licensing)は、企業や教育機関などで複数のユーザーが効率的にソフトウェアを利用するために欠かせないライセンス管理手法です。
特にフローティングライセンス(floating license)とも呼ばれるこの方式は、ライセンスの柔軟な割り当てを可能にし、IT資産の最適活用に大きく貢献します。
本記事では、ネットワークライセンスの基本的な仕組みから、導入のメリット・注意点、ノードロックライセンスとの違いまで、ITの専門的観点から詳しく解説します。
ネットワークライセンスとは?
基本定義と構造
ネットワークライセンスとは、使用権限(ライセンス)をライセンスサーバで一元的に管理し、同一ネットワーク内のクライアントPCが動的にライセンスを取得してソフトウェアを利用できる方式です。
これにより、ライセンスを必要とするタイミングでのみソフトウェアを起動でき、利用が終わるとライセンスがサーバへ返却され、別のユーザーが使用可能になります。
フローティングライセンス方式の特長
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同時使用数の制御が可能(例:10ライセンスで同時に10人まで利用可能)
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複数端末へのインストールが可能(制限されるのは起動数のみ)
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ライセンスの最適活用とコスト削減が可能
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業務用ソフトウェア(CAD、CAE、開発ツールなど)で多く採用されている
ライセンスサーバの仕組み
ライセンス取得の流れ
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クライアントPCがソフトウェアを起動
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自動的にライセンスサーバへ接続
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使用可能なライセンス数を確認
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空きがあればライセンスを取得し、ソフトウェア起動を許可
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使用終了時にライセンスをサーバに返却
例 – 10ライセンスの運用イメージ
企業で10本のライセンスを購入した場合、部署内の全PCにソフトウェアをインストールしても、同時に10台までしか使用できません。
11台目以降は、ライセンスが空くのを待つ必要があります。これによりライセンスのムダを最小限に抑えた運用が可能になります。
ノードロックライセンスとの違い
ノードロック方式の概要
ノードロックライセンス(node-locked licensing)は、ライセンスが特定のPC(ノード)に固定的に紐づけられる方式です。
以下のような特性があります。
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指定した1台のPCのみで使用可能
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別のPCへの移行はライセンス再発行が必要
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単純な管理だが柔軟性は低い
ネットワークライセンスとの比較表
導入のメリットと注意点
メリット
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ITコストの削減:必要最小限のライセンス購入で済む
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管理の効率化:中央サーバで一括管理が可能
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利用状況の可視化:ライセンスの利用履歴をログとして確認できる
注意点
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サーバ障害のリスク:ライセンスサーバが停止すると利用できなくなる
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ネットワーク依存性:サーバと通信できない環境では起動不可
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セキュリティ対策が必須:ライセンス情報を扱うため、適切な認証と暗号化が必要
まとめ
ネットワークライセンスは、企業におけるソフトウェア利用の柔軟性を高め、ライセンスコストを最適化する強力な仕組みです。
フローティングライセンス方式により、複数端末にインストールしながらも同時使用数で制限をかけることで、無駄のないライセンス運用が実現します。
一方で、ノードロックライセンスとの違いを理解し、自社の業務環境や利用スタイルに応じた選択が重要です。
適切な導入と管理によって、ソフトウェア資産の有効活用と業務効率の向上を図りましょう。