ネットワーク層とは?仕組み・役割・IPv4/IPv6との関係を徹底解説

IT辞書

ネットワーク層(Network Layer) は、現代のインターネット通信を支える中核的な概念です。

IPアドレスの割り当てやルーティングなど、ネットワーク同士の通信を可能にするための役割を担っており、ITエンジニアやセキュリティ担当者にとって理解が必須の領域です。

本記事では、ネットワーク層の基本から、OSIモデルとの関係、プロトコルの構造、実用例までをわかりやすく解説します。

ネットワーク層の定義と位置付け

ネットワーク層とは?

ネットワーク層は、通信プロトコルの階層構造(OSI参照モデル)において第3層(Layer 3 / レイヤ3 / L3)にあたります。

この階層の主な目的は、異なるネットワーク間でのデータ転送を可能にすることであり、エンドツーエンド通信を実現するための経路制御(ルーティング)やアドレス管理などを担当します。

OSI参照モデルとTCP/IPモデルの違い

TCP/IPモデルでは「インターネット層」と呼ばれる階層ですが、実務ではOSIに準じて「ネットワーク層」という表現が一般化しています。

ネットワーク層の主要な役割

1. IPアドレスによる論理的な識別

ネットワーク層では、各ホストやルーターにIPアドレスを割り当てることで、ネットワーク上の機器を一意に識別します。

これはMACアドレスによる物理識別とは異なり、ネットワーク単位での管理が可能です。

実例:

  • IPアドレス「192.168.1.10」は家庭内LANの端末に割り当てられるプライベートアドレス

  • 「8.8.8.8」はGoogleが運用するパブリックDNSサーバーのグローバルアドレス

2. ルーティング(経路選択)

複数のネットワーク間で通信を行う際に、データが最適な経路で目的地に届くように制御するのがルーティングです。

ネットワーク層はこれを担い、ルーターが経路情報をもとにパケットを転送します。

代表的なルーティングプロトコル:

  • OSPF(Open Shortest Path First)

  • BGP(Border Gateway Protocol)

  • RIP(Routing Information Protocol)

3. データパケットの分割と再構成

ネットワーク層では、送信データを適切なサイズに分割(フラグメンテーション)し、相手側で再構成(リエンカプシュレーション)する機能も含まれます。

これはMTU(Maximum Transmission Unit)に応じて処理されます。

ネットワーク層で使われる主要プロトコル

IP(Internet Protocol)

IPは、ネットワーク層の中核となるプロトコルで、すべてのインターネット通信の土台です。

現在主に利用されているのは以下の2つです。

IPv4(Internet Protocol version 4)

  • アドレス長:32ビット(約42億アドレス)

  • 表記例:192.168.0.1

  • 世界中で最も普及しているが、アドレス枯渇の問題がある

IPv6(Internet Protocol version 6)

  • アドレス長:128ビット(ほぼ無限に近い数のアドレス)

  • 表記例:2001:0db8:85a3::8a2e:0370:7334

  • IoT時代に対応した新しいプロトコル

ネットワーク層の実用例と活用シーン

企業ネットワークでの役割

企業の本社と支社をつなぐVPN構成や、異なるVLAN間の通信制御など、ネットワーク層の設計次第で通信の信頼性・セキュリティ・可用性が大きく変わります。

実例構成:

  • 本社と支社をIPsec VPNで接続

  • L3スイッチを用いた部門別ネットワーク分離

  • BGPを用いた冗長ルーティング構成

セキュリティとの関係

ネットワーク層はファイアウォールの制御ポイントとしても活用され、IPアドレスやポート番号によるパケットフィルタリングが可能です。

セキュリティ機器の設定にもネットワーク層の知識は不可欠です。

よくある誤解:ネットワーク層とリンク層・トランスポート層の違い

  • リンク層(第2層):同一ネットワーク内の通信(MACアドレスベース)

  • ネットワーク層(第3層):異なるネットワーク間の通信(IPアドレスベース)

  • トランスポート層(第4層):アプリケーション間の通信制御(TCP/UDP)

それぞれが異なる責務を持ち、連携して動作することによって安定した通信が成り立っています。

まとめ

ネットワーク層は、インターネットの根幹を成す通信制御の要であり、IPアドレスによる識別・ルーティング・パケット分割再構成など、多くの重要な役割を担っています。

特に、IPv6への移行やクラウド・IoT時代のネットワーク設計においては、この層の深い理解が求められます。

ネットワークエンジニア、セキュリティ担当、インフラ設計者など、ITに関わるすべての人がこのネットワーク層の仕組みと実践的な活用法を理解することで、より安全で効率的なネットワーク構築が可能になるでしょう。

さらに参考してください:

ネットワークセグメントとは?VLAN・ブロードキャストドメインとの違いも徹底解説!

Rate this post