ハンドシェイク(handshaking)は、コンピュータやネットワーク機器が通信を開始する前に行う設定情報の交換や接続確認のプロセスを指します。
この一見地味な工程が、通信の安定性やセキュリティを大きく左右します。
本記事では、通信プロトコルにおけるハンドシェイクの仕組みや、電子回路・セキュリティ分野での応用例をIT専門の視点から解説します。
ハンドシェイクとは?基本概念の理解
ITにおける「握手」プロセス
ハンドシェイクとは、2つの機器やシステムが通信を開始する前に行う相互確認プロセスで、英語の “handshake”(握手)に由来します。
ITではこの「握手」が以下のような目的で使われます:
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通信プロトコルのバージョン確認
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データ転送の符号化方式やエンコード形式の取り決め
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誤り訂正方式(ECCなど)
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暗号化の有無、暗号鍵の交換(TLSなど)
ハンドシェイクはどこで使われるか?
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インターネット通信(例:TLSハンドシェイク)
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シリアル通信(RS-232Cなど)
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デバイス同士の接続(USB、Bluetooth)
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電子回路の制御信号伝送
通信プロトコルとハンドシェイクの仕組み
TCP/IP通信における三者間ハンドシェイク
TCPでは、接続を確立する際に「3-way handshaking」と呼ばれるプロセスを行います:
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クライアント → SYN:接続要求
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サーバー → SYN-ACK:要求を受理+応答
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クライアント → ACK:応答の確認
この流れによって、両者が通信可能な状態であることを相互に確認し、安全な通信を開始できます。
例:
WebブラウザでWebサイトを開くとき、最初にこの3-wayハンドシェイクがTCPレベルで実行されます。
TLS/SSLにおけるセキュアハンドシェイク
HTTPS通信では、通信の前にTLSハンドシェイクが行われ、以下のような情報交換が実施されます:
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暗号化方式の選定(例:AES, RSA)
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サーバ証明書の送信(公開鍵付き)
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共通鍵の生成と共有
このプロセスを経て、クライアントとサーバ間で暗号化通信の準備が整い、安全なデータ送信が可能になります。
電子回路におけるハンドシェイク通信
同期通信と非同期通信
電子回路では、ハンドシェイクは非同期通信で多く使用されます。
例えば、以下のような信号線が用いられます:
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READY信号:受信側がデータの受信準備完了を通知
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ACK信号:送信側が受信確認を受けて次のデータを送信
この方式では、送信側と受信側がそれぞれの準備状況を確認し合うことで、データの正確な伝送を実現します。
応用例:
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マイコンとセンサーモジュール間のデータ交換
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FPGAなどのカスタム回路での制御信号伝送
ハンドシェイクの重要性とトラブル回避
なぜハンドシェイクが重要なのか?
ハンドシェイクは、通信の信頼性・互換性・セキュリティを確保する土台となります。
これを省略・失敗すると、以下のような問題が発生します:
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通信エラーや接続不良
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セキュリティリスク(中間者攻撃など)
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データの誤送信や取りこぼし
よくあるハンドシェイクの失敗要因
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プロトコルの不一致(例:TLSバージョンの非対応)
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ネットワークの遅延・タイムアウト
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ファイアウォールやプロキシによるブロック
解決策:
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双方の通信仕様の明確化
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リトライ機構の実装
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ハンドシェイク処理のログ出力による原因分析
まとめ
ハンドシェイクは、あらゆるIT通信の基盤として欠かせない初期通信プロトコルです。
以下のポイントを覚えておきましょう:
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通信開始前に相互の条件を取り決めるプロセス
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TCPやTLSなど主要プロトコルに不可欠
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電子回路でも受信確認手段として活用
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セキュリティ確保とトラブル防止の要
現代のITシステムは多様なデバイスや通信方式で構成されており、ハンドシェイクの理解はエンジニアにとって基本中の基本です。
通信エラーや互換性問題の回避のためにも、確実な設計・実装が求められます。