ハードリンク(Hard Link)は、UNIX系OSやWindowsのNTFSで利用可能な、ファイルシステムの基本かつ強力な機能の一つです。
ファイルやディレクトリに複数の名前(参照)を与えることで、同一のデータ実体を複数のパスから操作可能にするこの仕組みは、効率的なストレージ運用や高可用性の観点から非常に有用です。
この記事では、ハードリンクの仕組みや用途、ソフトリンク(シンボリックリンク)との違い、実践的な使い方について詳しく解説します。
ハードリンクとは何か?
ファイルと名前の分離構造
現代のファイルシステムでは、ストレージ上の「データ本体」と、ファイル名やメタ情報(作成日時、パスなど)を管理するディレクトリエントリが分離されています。
ハードリンクは、このディレクトリエントリを複数作成することで、一つのファイルデータに対して複数の参照(名前)を持たせる仕組みです。
この操作によって、original.txt
とlinked.txt
は等価なファイル名となり、どちらから操作しても同じファイル実体にアクセスできます。
ハードリンクの特徴と利点
削除してもデータは残る
ハードリンクの大きな特徴は、一方のリンクを削除しても他方が存在すればファイルは消えないことです。
これは、ファイルの実体はリンク数(参照数)を元に管理されており、全てのリンクが削除された時点で初めてストレージ領域が解放されるためです。
ストレージの節約と高速アクセス
大量の重複ファイルを避けつつ、1つのデータを複数のパスから利用可能なため、バックアップやログ管理の最適化にも貢献します。
例:ログファイルを複数部門で共有
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/var/logs/system.log
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/home/dev/logs/sysref.log
(←ハードリンク)
このように設定すれば、部門ごとに別名で同一ログを確認でき、管理もシンプルです。
ソフトリンク(シンボリックリンク)との違い
技術者が混同しやすいポイント
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ハードリンクは「実体共有」
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ソフトリンクは「ポインタ(参照)」
特にパーミッション管理やバックアップの場面ではこの違いが極めて重要です。
ハードリンクの制約と注意点
制限事項
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異なるパーティション間では作成不可
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通常のユーザーはディレクトリへのハードリンクを作成不可(UNIX/Linux)
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無限ループ防止のため制限あり
ファイル管理上の注意
ハードリンクが多用されている環境では、削除したつもりでもファイルが残っていることがあるため、ディスク使用量の計測やファイル管理が難しくなることがあります。
実践活用例と応用
DevOps環境におけるリリース管理
CI/CDパイプラインで、同一バージョンのアプリケーションバイナリを複数環境に展開する際に、ハードリンクを活用することでストレージ効率を改善可能です。
バックアップ最適化
rsyncやcpコマンドの--link-dest
オプションを使えば、重複を排除した高速バックアップが可能になります。
まとめ
ハードリンクは、ファイル実体を共有しながら複数のパスから等しくアクセスできる強力なファイルシステム機能です。
ソフトリンクとの違いを理解し、正しく使い分けることで、ストレージ効率の向上やデータの可用性確保が実現できます。
特にサーバー管理者やシステム開発者にとっては、ハードリンクの挙動や制約を深く理解しておくことが、システムの安定運用に繋がります。