システムトラブルや人的ミス、サイバー攻撃によるデータ損失。
これに備える最も基本かつ重要な対策がバックアップ(Backup)です。
企業のITインフラから個人のPC環境まで、あらゆるシーンでデータの保護と復旧は欠かせません。
本記事では、バックアップの意味、仕組み、種類、活用方法、そして設計時の注意点まで、IT専門知識に基づいて詳しく解説します。
バックアップとは?
バックアップの定義
バックアップ(Backup)とは、機器の故障や人的ミス、外部攻撃によるデータの消失や破損に備え、データやシステム構成の複製を別の場所に保存することを指します。
バックアップは以下の2つの意味で使われることがあります:
-
プロセスとしてのバックアップ:データをコピーして保存する作業
-
オブジェクトとしてのバックアップ:コピーされたデータそのもの、または記録媒体
また、ITではデータだけでなく、バックアップ回線やバックアップサーバのように、代替手段・設備全般を意味することもあります。
バックアップの目的と重要性
なぜバックアップが必要なのか?
バックアップは、次のようなリスクに備えるための基本的なセキュリティ対策です:
-
ハードウェア障害(HDD/SSDの故障)
-
ソフトウェア障害(OSやアプリの不具合)
-
ランサムウェアなどのマルウェア攻撃
-
ヒューマンエラー(誤操作による削除)
-
自然災害(火災、水害など)
実際の被害例
-
金融業界でのシステム障害による数億円の損失
-
医療現場での患者データ消失による治療遅延
-
中小企業での業務停止と信頼失墜
このような事態を防ぐには、適切なバックアップ体制を構築・運用することが不可欠です。
バックアップの種類と方式
バックアップの種類
フルバックアップ(Full Backup)
すべての対象データを丸ごとコピー。
復元が容易だが、時間と容量を多く消費します。
増分バックアップ(Incremental Backup)
直近のバックアップ以降に変更されたデータのみを保存。
効率的だが復元にはすべての差分が必要。
差分バックアップ(Differential Backup)
直近のフルバックアップからの変更データを保存。
増分よりは復元が速く、容量も中程度。
バックアップの保存先
-
オンプレミス(NAS、外付けHDDなど)
-
クラウドストレージ(Google Drive、AWS S3、Azure Blobなど)
-
テープ装置(長期保存・災害対策に有効)
バックアップ設計における考慮点
1. バックアップの頻度
-
ミッションクリティカル:リアルタイムまたは毎時間
-
一般業務:1日1回(深夜など)
-
個人PC:週1回〜月1回
2. バックアップポリシーの策定
-
何を、いつ、どこに、どうやってバックアップするかを明文化
-
3-2-1ルールの推奨:
3つのコピーを、2種類のメディアに、1つはオフサイトに保管
3. 復元(リストア)手順の検証
バックアップがあっても復元できなければ無意味。
定期的にリストアテストを行い、災害時に備えたDR(ディザスタリカバリ)計画も重要です。
バックアップのIT業界での活用例
企業システムでの例
-
データベースの定期バックアップ:OracleやMySQLでのDUMP保存
-
仮想マシンのスナップショット:VMwareやHyper-Vを利用
DevOps/CI環境での利用
-
Gitリポジトリのミラー保存
-
Jenkinsの構成バックアップ
-
IaC(Infrastructure as Code)のコード保存
クラウドバックアップのトレンド
-
自動化 + 暗号化 + バージョン管理の導入
-
BaaS(Backup as a Service)の活用(例:Backblaze、Veeam Cloud)
まとめ
バックアップ(Backup)は、現代のITインフラにおいて絶対に欠かせない安全策です。
本記事のポイント:
-
バックアップとは:データやシステム構成のコピーと保管
-
重要性:トラブルや攻撃からの復旧を可能に
-
種類と方法:フル・増分・差分、オンプレ・クラウド
-
設計の考慮点:頻度・保存先・ポリシー・復元計画
-
実例:企業ITからDevOps、クラウド環境まで幅広く活用
日常的にバックアップを意識し、万が一に備える習慣を持つことが、トラブル時の被害を最小限に抑えるカギとなります。