ネットワーク通信が遅くなったり、データが届かないと感じたことはありませんか?
その背後にはパケットドロップ(dropping packets)が関係しているかもしれません。
これは、通信途中でパケットが意図的または不可抗力的に破棄される現象であり、ネットワーク性能や信頼性に直接影響を与える重要な要素です。
本記事では、パケットドロップとは何か、パケットロスとの違い、主な原因とその回避策について、IT技術者向けにわかりやすく解説していきます。
パケットドロップの基礎知識
パケットドロップとは?
パケットドロップとは、ネットワーク機器(ルーター、スイッチ、エンドポイントなど)が特定の条件に応じてパケットを破棄する処理のことです。
この動作は以下のように分類されます:
-
正常な動作としての破棄(セキュリティや仕様に基づく処理)
-
異常・エラーによる破棄(帯域不足や障害など)
キーワード:パケットドロップ、パケットロス、ネットワークエラー
パケットドロップの具体的なパターン
正常なパケットドロップ
セキュリティポリシーに基づくフィルタリング
-
ファイアウォールやパケットフィルタによって、特定のIP、ポート、プロトコルをブロック
-
想定外の通信(例:未許可プロトコル)を遮断
プロトコルやパケット構造の不一致
-
ヘッダー情報の破損、チェックサムエラーなどが発生した場合に破棄
-
アプリケーションが対応していない形式のパケット受信時にもドロップされる
異常によるパケットドロップ
ネットワーク混雑・帯域超過
-
ルーターやスイッチのバッファ容量オーバー
-
QoS設定が不適切な場合、高優先度の通信以外がドロップされる
ルーティング障害・一時的な宛先不達
-
経路上のノードでの障害や設定ミス
-
DNS障害やARP解決失敗により、宛先MACアドレスが取得できないケースなど
パケットドロップとパケットロスの違い
パケットドロップが及ぼす影響とその対策
ネットワーク遅延・アプリケーション障害
-
リアルタイム通信(VoIP, Zoomなど)で遅延や音切れの原因となる
-
TCP通信では再送が頻発し、スループットが著しく低下
対策・チューニング方法
1. 帯域幅の見直しとQoS設定
-
高負荷時でも重要トラフィックが保護されるよう優先順位付けを行う
2. ネットワーク機器のバッファ監視と最適化
-
バッファブロート(Bufferbloat)の回避
-
過剰なキューイングが発生しないようにRED(Random Early Detection)等の導入
3. ログとモニタリングで早期検知
-
SNMPやNetFlowを利用したトラフィックの可視化
-
syslogに記録されるドロップイベントの監視
パケットドロップの実例と運用現場での対応
例:企業ネットワークにおけるトラフィック制御
-
昼休み時間帯にビデオ会議やクラウドサービス利用が集中 → 低優先度のトラフィックがドロップ
例:データセンターのスパイク対策
-
バックアップスケジュールと同時にユーザーアクセスが重なり、スイッチの転送能力を超える → 自動的に一部通信が破棄される
まとめ
パケットドロップは、ネットワーク運用において避けて通れない要素です。
その発生原因は多岐にわたり、意図的に行われる場合もあれば、システム負荷の結果として現れる場合もあります。
-
セキュリティや仕様に基づく正常な破棄
-
通信障害やオーバーロードによる異常な破棄
-
パケットロスとの違いを理解することがトラブルシュートの鍵
-
適切な監視と対策により、ネットワークの安定性と信頼性を確保可能
ITインフラの健全性を維持するには、パケットドロップのメカニズムと原因を深く理解し、適切な対処を行うことが求められます。