パラレル通信とは?並列伝送方式の仕組みとITにおける活用例

IT辞書

パラレル通信(parallel communication) は、複数の信号線を使用して、同時に複数ビットのデータを送受信する通信方式です。

かつてはコンピュータ内部や周辺機器との通信で主流の方式でしたが、今日では高速化に伴い多くの用途でシリアル通信に置き換えられています。

この記事では、パラレル通信の仕組みや利点・欠点、IT分野における具体的な応用例、そして現在の技術トレンドとの比較まで、専門的に解説します。

パラレル通信の基本概念

パラレル通信とは何か?

パラレル通信とは、複数の信号線(ワイヤ)を用いて、1クロックサイクルで複数ビットのデータを並列的に送受信する通信方式です。

これにより、理論上は高速なデータ転送が可能になります。

例えば、8本の信号線を使えば、1クロックで8ビット(=1バイト)のデータを同時に転送できるため、通信速度の向上が見込めます。

代表的な用途と通信規格

パラレル通信は、以下のようなハードウェアや規格で活用されてきました。

  • ISAバス:1980年代に登場したPC内部バスの先駆け。

  • PCIバス:高速データ転送を実現し、グラフィックカードなどに広く利用。

  • IDE/ATA:HDD・CD-ROMなどのストレージデバイスの接続に使用。

  • SCSI:サーバー向けの高信頼性ストレージ接続。

  • IEEE 1284(セントロニクス):PCとプリンタの接続に一般的だったパラレルポート。

パラレル通信の仕組みと特徴

高速伝送とその課題

メリット

  • 複数ビットを同時転送することで、理論上の通信速度が高い

  • コンピュータ内部バスとの相性が良い。

デメリット

  • 信号の同期制御が複雑:複数線の信号タイミングを揃える必要がある。

  • クロストーク(電磁的干渉):隣接する信号線間でノイズが発生しやすく、長距離伝送ではエラーが増加。

  • ケーブルの太さやコスト:信号線が増えることで物理的な制約も大きくなる。

シリアル通信との比較

パラレル通信の実用例と現状

歴史的な利用例

1980年代〜2000年代初期においては、パソコン本体と周辺機器(プリンタ、HDD等)を接続するための主要手段として使われていました。

特に、セントロニクス準拠のパラレルポートは一般家庭でも広く普及していました。

現代での使用例

現在では、産業用装置やレガシーシステムの中でパラレル通信が残っているケースがあります。

例えば、旧式の制御システムや工場内の生産ラインでは、安定性と互換性を重視し、あえてパラレル通信を継続使用している例も見られます。

移行が進む現代の通信規格

近年では、以下のようなシリアル通信方式への移行が進んでいます:

  • IDE → SATA

  • PCI → PCI Express

  • IEEE1284 → USB

これらは物理的な構造を簡素化しつつ、高速・高信頼の通信を実現しています。

まとめ

パラレル通信は、複数の信号線を用いて高速なデータ転送を実現する方式として、かつてIT分野の基盤を支えていました。

特にPC内部のバス構造やプリンタ接続、ストレージ接続など多くの用途で活躍しました。

しかし、通信速度の高速化やノイズの問題から、現在ではシリアル通信への移行が進んでおり、パラレル通信は主に一部の特殊用途やレガシー機器に限定されつつあります。

とはいえ、通信方式の基本を理解するうえで、パラレル通信の仕組みやその進化は非常に重要です。

今後も新たな通信技術の開発が進む中で、過去の技術から学ぶ姿勢が求められます。

さらに参考してください:

パラレルインターフェースとは?IT分野における並列通信の基本と応用

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