中間者攻撃(MITM攻撃)は、ネットワーク通信における代表的なサイバー攻撃のひとつであり、ユーザーが気づかないうちに通信内容を盗聴・改ざんされる非常に危険な手法です。
本記事では、中間者攻撃の仕組み、発生する背景、実際の被害例、そして具体的なセキュリティ対策まで、ITエンジニアの視点から詳しく解説します。
中間者攻撃(MITM攻撃)とは?
通信の途中に割り込む攻撃手法
中間者攻撃(Man-In-The-Middle attack)とは、通信を行う二者間のやり取りに第三者が密かに割り込み、情報を傍受または改ざんするサイバー攻撃です。
攻撃者は、あたかも正当な通信相手のふりをしてデータを中継し、双方が攻撃に気づかないままやり取りを続けてしまう状況を作り出します。
MITM攻撃が発生する具体例
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偽のWi-Fiアクセスポイント:カフェや空港などの公衆無線LANを偽装し、接続したユーザーの通信を傍受。
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公開鍵のすり替え:AがBに公開鍵を送信する途中で攻撃者Xが割り込み、自分の公開鍵を送りつけて通信内容を取得。
MITM攻撃の仕組み
公開鍵暗号に対する攻撃例
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AがBに公開鍵を送信。
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攻撃者XがAからBへの通信を傍受し、自分の公開鍵に置き換えてBに送信。
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BはXの公開鍵でデータを暗号化して送信。
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Xはそのデータを復号し、内容を改ざんするか確認して、再度Aの公開鍵で暗号化し直してAに送信。
このように、暗号化されていても安全とは限らないのが中間者攻撃の怖さです。
対象となる通信の種類
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HTTPS通信(TLS/SSL)
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電子メール(SMTP/IMAP/POP3)
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DNSクエリ(DNSキャッシュポイズニング)
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VPN通信の一部構成
中間者攻撃のリスクと被害
主なリスク
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個人情報の漏洩(ログイン情報、クレジットカード番号)
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セッションの乗っ取り(Cookie盗用)
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業務機密の流出(社内チャットやファイル転送内容)
実際の被害例
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某空港の公衆Wi-Fiを装ったMITM攻撃により、ビジネスマンのログイン情報が流出。
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オンラインバンキングにおいてセッション情報が盗まれ、金銭被害が発生。
中間者攻撃への具体的な対策
信頼されたデジタル証明書の利用
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認証局(CA)による公開鍵の検証により、相手の公開鍵が本物であることを確認。
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HTTPS(SSL/TLS)通信の徹底と証明書の有効性確認。
ネットワークの利用方法に注意
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公衆Wi-FiではVPN(仮想プライベートネットワーク)を利用。
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正規のアクセスポイントかどうかを事前に確認。
技術的対策
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DNSSEC(DNS Security Extensions)の導入
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HSTS(HTTP Strict Transport Security)ポリシーの活用
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E2EE(End-to-End Encryption)による通信内容の保護
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セキュリティソフトによるリアルタイム監視
開発者・管理者が取るべき予防措置
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通信暗号化の実装におけるベストプラクティスの遵守
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証明書の失効管理と監査の徹底
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ユーザーへの啓発(偽サイトや偽メールに注意を促す)
まとめ
中間者攻撃(MITM攻撃)は、巧妙かつ重大なセキュリティ脅威です。特に公開鍵のすり替えやWi-Fiの偽装といった手口は、一般ユーザーからITエンジニアまで幅広い層が被害に遭うリスクがあります。
対策としては、信頼できる証明書の使用、VPNの利用、エンドツーエンドの暗号化の導入など、複数のレイヤーで防御を固める必要があります。
常に「通信相手が本当に正しいか?」を確認する習慣を持つことが、被害を防ぐ第一歩となるでしょう。