ソフトウェア開発において、機能テストだけでシステム品質を担保できると思っていませんか?実は、製品の使い勝手や安定性、セキュリティといった「機能以外の要素」こそが、最終的なユーザー満足度を大きく左右します。
この記事では、そんな見落とされがちだが極めて重要な非機能テスト(non-functional testing)について、概要から種類、具体的な適用タイミングやテスト手法まで、ITエンジニア目線で詳しく解説します。
非機能テストとは何か?
機能テストとの違い
非機能テストとは、システムの「機能以外」の要件、つまり性能、信頼性、保守性、セキュリティ、ユーザビリティなどに関する要素を検証するテストです。
機能テストでは「仕様どおりに動くか」を確認しますが、非機能テストでは「どのように動作するか、どれだけ快適か、安全か」に注目します。
例で比較
なぜ非機能テストが重要なのか?
以下のような状況を想像してみてください。
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検索機能は正しく動くが、結果の表示に30秒かかる
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ログイン機能は問題ないが、第三者が簡単に突破できる脆弱性がある
これらはすべて非機能要件が満たされていないことが原因です。
機能が正しくても「実用に耐えない」システムは現場では使い物になりません。
非機能テストの主な種類
性能関連のテスト
性能テスト(Performance Testing)
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システムが要求されたパフォーマンス基準(処理速度、応答時間など)を満たしているかを評価。
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例:検索結果を2秒以内に返すかを検証。
負荷テスト(Load Testing)
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一定以上のユーザー数やデータ量においても、性能が維持されるかを確認。
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実運用を想定した同時アクセスの再現が重要。
ストレステスト(Stress Testing)
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想定外の負荷(大量アクセス、極端なデータ量)をかけて限界や障害発生ポイントを特定。
安定性・継続稼働を検証するテスト
ロングランテスト / 耐久テスト
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数時間〜数日間システムを動かし続け、メモリリークやリソース消費の偏りなどを発見。
ユーザビリティ関連のテスト
ユーザビリティテスト(Usability Testing)
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実際の利用者視点で、操作性・ナビゲーション・表示の分かりやすさなどを評価。
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UI/UXの設計改善に直結。
セキュリティ関連のテスト
セキュリティテスト(Security Testing)
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不正アクセスや情報漏洩のリスクを検出。
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OWASP Top 10 などの基準に基づき、脆弱性スキャンやペネトレーションテストを実施。
テスト実施のタイミングと注意点
非機能テストはいつ行うべき?
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システム開発の後半フェーズ、特にシステムテストや受け入れテスト前後に実施することが多い。
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なぜなら、機能がある程度完成していないと、非機能テスト結果に意味がないからです。
静的・動的の両面からアプローチ
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動的テスト:実際にプログラムを動かして測定(例:レスポンスタイム)
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静的テスト:コードレビューやチェックリストなどにより、要件に合致しているかを検証
非機能テストの具体的な活用例
Webアプリの例
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ログインや検索のAPIレスポンスをJMeterやLocustでテスト
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ログ収集・分析にPrometheus/Grafanaを活用して継続的に監視
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WebアプリのセキュリティスキャンにOWASP ZAPを用いる
組み込み系ソフトウェアの例
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リアルタイム性や処理の遅延に関する性能プロファイリング
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長時間稼働によるヒープ領域の圧迫チェック
まとめ
非機能テスト(non-functional testing)は、単に「動けばよい」を超えて、信頼されるシステムを実現するための欠かせないプロセスです。
本記事の要点を整理すると:
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非機能テストは性能・セキュリティ・信頼性・使用性など機能外の品質保証を目的とする
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機能が正しくても、非機能要件が不十分ならユーザー満足度は下がる
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各種テスト(性能、負荷、セキュリティ、ユーザビリティなど)を適切なタイミングで実施することが重要
IT製品やサービスが高度化・多様化する今、非機能要件の品質評価こそが競争力のカギとなります。
プロジェクトの成功のために、ぜひ非機能テストにも注力しましょう。
さらに参考してください:
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