データベースのトランザクション分離レベルとは?4つの種類とその選び方を解説

トランザクション分離レベルは、データベース管理システム(DBMS)において、複数のトランザクションを同時に実行する際に、どれだけの独立性を保証するかを設定する重要な概念です。

トランザクションの独立性と並行性を適切に管理することで、データの整合性を保ちつつ、システムの性能を最大限に引き出すことが可能となります。

本記事では、トランザクション分離レベルの基本的な考え方と、主要な4つのレベルについて詳しく説明します。

 

トランザクション分離レベルの基本概念とメリット

トランザクションとは、データベースに対する一連の操作を一体不可分の単位として管理し、実行の前後でデータに矛盾がないように制御する処理方式です。

複数のトランザクションが並行して実行される場合、分離レベルによって、他のトランザクションからの影響をどの程度まで排除するかを制御します。

これにより、データの一貫性を保ちながら、性能の低下を最小限に抑えることが可能となります。

トランザクション分離レベル

トランザクション分離レベルの種類

1. SERIALIZABLE(シリアライザブル)

最も独立性が高い分離レベルであり、トランザクションを直列に実行したかのように扱われる設定です。

これにより、他のトランザクションによるデータの更新の影響を一切受けませんが、トランザクション間での競合が発生すると待機が発生し、システムの性能が低下することがあります。

シリアライザブルは、整合性が特に重要な業務システムでよく用いられます。

 

2. REPEATABLE READ(リピータブルリード)

2番目に独立性が高い分離レベルで、トランザクション中に何度同じデータを読み取っても、常に同じ値が返されます。

他のトランザクションがデータを更新する影響は受けませんが、データの追加や削除には影響されるため、ファントムリードと呼ばれる現象が発生する可能性があります。

高い一貫性が求められる処理に適しています。

 

3. READ COMMITTED(リードコミッティッド)

一般的なデータベースのデフォルトの分離レベルであり、トランザクション実行中に他のトランザクションによってコミットされたデータの更新は影響を受けますが、未コミットのデータには影響されません。

この分離レベルでは、他のトランザクションによってデータの更新が行われると同じデータの値が変わることがあり、ノンリピータブルリードという現象が生じます。

多くの業務システムで用いられ、安定した性能と独立性のバランスが取れます。

 

4. READ UNCOMMITTED(リードアンコミッティッド)

最も独立性が低い分離レベルで、他のトランザクションによる未コミットのデータにもアクセス可能です。

このため、ダーティリードと呼ばれる、不完全なデータを読み込んでしまう現象が生じる可能性があります。

高いパフォーマンスが求められる場面や、データの整合性がそれほど重要でない場面に適していますが、データの一貫性が担保されないため、慎重に使用する必要があります。

 

トランザクション分離レベルの選択基準

データベースシステムにおいては、処理性能とデータ整合性のバランスを見極めた上で、最適なトランザクション分離レベルを選択することが重要です。以下にいくつかのシーンごとの選択基準を示します:

  • データの一貫性が最優先されるシステム(金融業務や医療システムなど)では、SERIALIZABLEやREPEATABLE READが推奨されます。
  • パフォーマンスが求められるシステム(大量の同時アクセスが発生するWebシステムなど)では、READ COMMITTEDが適しており、READ UNCOMMITTEDも場合によっては選択肢に入ります。
  • 一貫性とパフォーマンスのバランスを取りたい場合は、READ COMMITTEDが広く用いられ、ほとんどのRDBMSでデフォルト設定とされています。

 

実際のシーンでのトランザクション分離レベルの利用例

金融機関におけるデータ処理

銀行の取引システムなど、データの一貫性が最も重要視される場面では、SERIALIZABLE分離レベルが用いられます。

これにより、取引の整合性が保証され、データの不整合が防止されます。

 

ECサイトでの在庫管理

複数のユーザーが同時にアクセスするECサイトでは、READ COMMITTED分離レベルを使用することで、在庫数の変更がリアルタイムで反映され、正確な在庫数が表示されるようになります。

この設定により、パフォーマンスと整合性のバランスが実現されます。

 

分析システムでのレポート生成

大量のデータを参照する分析システムでは、READ UNCOMMITTED分離レベルを使用して、高速なデータ取得を優先させることが一般的です。

この場合、多少のデータ不整合が許容されるため、ダーティリードが発生するリスクも許容されます。

 

まとめ

トランザクション分離レベルの設定は、データベースの性能と整合性に大きな影響を与えます。

システムの目的や要件に応じて適切な分離レベルを選択することで、トランザクションの安全性と処理速度を最大限に引き出すことが可能です。

 

さらに参照してください:

トランザクションログとは?データベース管理に欠かせないその役割と仕組みを徹底解説

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By jisho5