コンパクトPCI（Compact PCI）は、産業用コンピュータ基板の重要な標準規格であり、特に工業機器や通信システムにおいて多く使用されています。
本記事では、コンパクトPCIの基本的な概念、歴史、技術的特徴、そしてその応用について詳しく解説します。
また、PCIから派生したコンパクトPCIのメリットや、後継規格であるCompact PCI Expressについても触れ、最新の技術動向についてもご紹介します。
コンパクトPCIの基本概念
コンパクトPCI（CPCI）とは？
**コンパクトPCI（Compact PCI）は、主に産業用コンピュータの基板に使用される規格で、PCIバスをベースにしています。
もともとはパソコンなどの一般的なコンピュータで使用されていたPCIバスが、産業機器向けに進化した形で標準化されたのがコンパクトPCIです。
この規格は、産業用コンピュータの基板や拡張ボードを接続するための仕様を提供し、特にPICMG（PCI Industrial Computers Manufacturers Group）**によって策定されました。
PCIバスとの違い
PCI（Peripheral Component Interconnect）は、もともとパソコンのマザーボードと拡張カードを接続するためのコネクタ規格でした。
しかし、パソコン向けのPCIバスは次第に**PCI Express（PCIe）**に取って代わられました。
一方、コンパクトPCIは産業向けに特化した規格であり、より堅牢で拡張性の高い設計が求められる分野において重要な役割を果たしています。
コンパクトPCIの特徴と仕様
バス構成とコネクタ
コンパクトPCIでは、産業用コンピュータ基板やシングルボードコンピュータ（SBC）を接続するために、バックプレーン（内部接続装置）を使用します。
規格に基づいて、3Uサイズまたは6Uサイズの筐体に収めることができます。
コンパクトPCIの特徴的な点は、J1コネクタを使用していることです。
このコネクタは110ピンで、ピン間隔は2mmと規格化されており、オプションで追加のJ2コネクタを使用することも可能です。
これにより、柔軟な拡張性が実現されています。
信号形式と拡張性
標準的には、32ビットPCI信号が使用されますが、J2コネクタを併用することで、64ビットPCIとしての利用も可能です。
さらに、Ethernet信号を流すことができるため、ネットワークスイッチを構成することも可能です。
これにより、コンパクトPCIは、単なるコンピュータ基板だけでなく、ネットワーク機器としても利用できるようになっています。
高度な拡張規格：Compact PCI Express
**Compact PCI Express（CPCI Express）**は、コンパクトPCIの後継規格として、より高速なデータ転送が可能なPCI Express（PCIe）に対応しています。
この規格は、従来のコンパクトPCIのメリットを維持しつつ、最新の高速通信技術に対応することで、産業用コンピュータの性能向上を図っています。
特に、通信速度や帯域幅の増加が求められる現代の産業分野において、CPCI Expressは重要な役割を果たしています。
コンパクトPCIの応用分野
産業機器での利用
コンパクトPCIは、その堅牢性と拡張性から、産業機器や通信インフラにおいて広く使用されています。
特に、**シングルボードコンピュータ（SBC）**として利用されることが多く、これらのコンピュータはバックプレーンと接続され、特定のアプリケーションに特化した処理を行います。
例えば、製造業や自動車産業では、リアルタイムでのデータ処理や制御を行うためのコンピュータ基板として利用されています。
通信機器やネットワークシステム
コンパクトPCIは、ネットワーク機器や通信システムにも適しています。
特に、Ethernet信号を利用してネットワークスイッチやルータを構成することができるため、データセンターや通信インフラにおいて、効率的なネットワーク構築が可能です。
また、CPCI Expressでは、さらに高速なデータ通信が可能となり、より多くのデバイスを接続することができます。
コンパクトPCIの利点と課題
利点
- 堅牢性と耐久性: コンパクトPCIは、厳しい産業環境においても安定した動作を保証します。
- 拡張性: J1コネクタおよびJ2コネクタの追加により、高い拡張性を持つ設計が可能です。
- 柔軟性: 32ビットおよび64ビットのPCI信号をサポートしており、用途に応じて適切な構成を選べます。
課題
- コスト: 高度な機能を持つため、導入コストが高くなることがあります。
- 市場の競争: PCI Expressなど、他の高速通信規格との競争が激化しており、技術の進化が求められます。
まとめ:
コンパクトPCIは、産業用コンピュータやネットワーク機器の設計において重要な役割を果たしており、その堅牢性、拡張性、柔軟性が多くの分野で評価されています。
PCI Expressに対応した後継規格であるCPCI Expressも登場し、今後も進化が期待されます。
これらの技術を理解することで、産業機器の設計や通信システムの構築において、より効率的で強力なソリューションを提供することができるでしょう。