ネットワークセグメント(network segment) は、企業のITインフラ設計において欠かせない基本概念です。
セグメントを適切に設計・管理することで、通信の効率化、セキュリティの向上、障害の局所化といった多くのメリットが得られます。
本記事では、ネットワークセグメントの定義、種類、現代的な利用法、さらには VLAN やブロードキャストドメインとの違いについて、専門的にわかりやすく解説します。
ネットワークセグメントの基本理解
ネットワークセグメントとは?
ネットワークセグメント とは、ある基準に基づいて分割された 物理的または論理的なネットワークの単位 を指します。
主に以下の2つの観点から定義されることが多いです。
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コリジョンドメイン(collision domain):Ethernetにおいて、通信信号の衝突が起こり得る範囲
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ブロードキャストドメイン(broadcast domain):同じブロードキャストパケットが届く範囲
歴史的背景
かつての同軸ケーブルやリピータハブを使ったネットワークでは、すべての通信が一つの信号線を共有しており、これをネットワークセグメントと呼んでいました。
しかし、スイッチングハブ(ネットワークスイッチ)の登場により、コリジョンドメインはポート単位で分割されるようになりました。
これにより、現在ではセグメントという言葉がブロードキャストドメインの意味で使われることが増えています。
セグメント分割の目的とメリット
パフォーマンスの向上
ネットワークをセグメントごとに分割することで、ブロードキャストトラフィックの範囲を限定し、帯域幅の無駄遣いを抑えることができます。
これにより、ネットワーク全体のパフォーマンスが向上します。
セキュリティの向上
セグメント化はセキュリティ対策としても有効です。
異なるセグメント間の通信はルーターやファイアウォールを経由するため、不正アクセスの遮断や監視が容易になります。
障害の局所化
ネットワーク障害が発生しても、影響範囲がセグメント内に限定されるため、トラブルシューティングが効率的になります。
ネットワークセグメントの種類
物理的ネットワークセグメント
ケーブル接続やスイッチのポート構成に基づいて定義されるセグメント。
主に小規模ネットワークや固定構成で用いられます。
論理的ネットワークセグメント(VLAN)
VLAN(Virtual LAN)を活用することで、物理的には同じネットワーク内でも、論理的に複数のセグメントを構築できます。
例:
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営業部と総務部でVLANを分離し、ブロードキャストトラフィックの分離とアクセス制御を実施
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ゲスト用Wi-Fiと社内Wi-FiをVLANで完全に分けてセキュリティを確保
ブロードキャストドメインとネットワークセグメントの関係
現在では、「ネットワークセグメント = ブロードキャストドメイン」と捉えるのが一般的です。
ブロードキャストドメインの例:
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同一VLAN内の全端末が同一ブロードキャストドメイン
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異なるVLAN間ではブロードキャストが届かないため、別セグメント扱い
この考え方は、トラフィック管理やセキュリティポリシーの設計において非常に重要です。
ネットワークセグメント設計のベストプラクティス
1. 用途別に分割する
部署単位(営業・開発・総務など)や機能別(VoIP、プリンタ、監視カメラ)にセグメントを設計することで、通信の最適化と制御がしやすくなります。
2. VLANとACLの組み合わせ
VLAN分離 + アクセス制御リスト(ACL)で、不要な通信をブロックし、業務に必要な通信のみを許可する構成が推奨されます。
3. セキュリティセグメントの活用
インターネットとの境界にDMZ(De-Militarized Zone)を設置し、外部公開用のWebサーバーやメールサーバーを別セグメントで管理することで、内部ネットワークへの侵入リスクを最小限に抑えます。
まとめ
ネットワークセグメントの設計は、ネットワーク構築の根幹であり、通信効率、セキュリティ、障害対応に直結する重要な要素です。
現代のIT環境では、物理的な接続構成だけでなく、VLANを用いた論理的な分割も取り入れながら、柔軟かつ安全なネットワーク運用が求められます。
ネットワークを最適に構成するために、セグメントの役割を正しく理解し、自社の要件に合った構成を目指しましょう。