近年のITインフラにおいて、仮想化技術は欠かせない存在となっています。
その中でも特に注目されているのが、ハイパーバイザ型仮想化(Hypervisor-based Virtualization)です。
この技術により、一台の物理サーバ上で複数の仮想マシン(VM)を効率的に動作させることが可能になります。
今回は、ハイパーバイザ型仮想化の仕組みやメリット、さらに完全仮想化と準仮想化の違いについて詳しく解説します。
ハイパーバイザ型仮想化とは?
ハードウェア直結の仮想化ソリューション
ハイパーバイザ型仮想化とは、ハードウェア上で直接動作するハイパーバイザ(Hypervisor)によって、複数の仮想マシン(VM)を構築・管理する仮想化手法です。
この方式では、ハイパーバイザが物理コンピュータのハードウェア資源(CPU、メモリ、ストレージなど)を制御し、OSを含む仮想マシン環境を作り出します。
主な特徴
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ホストOSを必要としないため、性能劣化が少ない
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異なる種類のOSを同時に動作させられる柔軟性
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大規模なサーバ仮想化に適している
実例
例えば、1台の物理サーバに「Windows Server 2022」と「Red Hat Enterprise Linux」を同時に稼働させ、社内アプリケーションと外部サービスを分離して運用することができます。
ハイパーバイザ型仮想化の構成要素と技術的分類
ハイパーバイザの役割
ハイパーバイザ(Hypervisor)は、仮想マシンのリソース割り当て・スケジューリング・隔離を担当するソフトウェア層です。
一般的なOSのようにアプリケーションの実行環境は提供せず、純粋に仮想化に特化した制御を行います。
OSから見ると、仮想マシンは実際のコンピュータと同じように認識され、OSのインストールやソフトウェアの運用も通常通り行えます。
準仮想化(Paravirtualization)と完全仮想化(Full Virtualization)
ハイパーバイザ型仮想化は、内部構造や動作の仕組みによって、以下の2つの方式に分類されます。
準仮想化(Paravirtualization)
概要
準仮想化は、仮想マシンが完全なハードウェアエミュレーションを行わず、ゲストOSが仮想化に最適化された構成で動作する方式です。
特徴
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ゲストOSがハイパーバイザに合わせて修正・最適化されている
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仮想化によるオーバーヘッドが少なく、性能が高い
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ゲストOSの変更が必要なため、導入には制限あり
用例
Linux環境でXenハイパーバイザを利用する場合、ゲストOSに「Xen対応カーネル」を適用して高速な仮想化環境を実現します。
完全仮想化(Full Virtualization)
概要
完全仮想化では、ハイパーバイザが物理マシンと同一のハードウェア構成を仮想的に再現し、ゲストOSに特別な修正を加えることなく、そのまま動作させることができます。
特徴
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ゲストOSの修正が不要
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ソフトウェア開発やテスト環境に最適
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エミュレーション処理が多く、性能はやや劣化しやすい
用例
開発者がWindows OS上でVirtualBoxを使用して、さまざまなLinuxディストリビューションの動作検証を行う際などに使用されます。
ハイパーバイザ型仮想化の主な活用シーン
企業インフラの仮想化
大規模な情報システムでは、物理サーバの数を減らし、コスト削減と省スペース化を実現するためにハイパーバイザ型仮想化が用いられます。
クラウドサービスの基盤
AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudなどのクラウドプラットフォームでは、ハイパーバイザによる仮想マシン管理が標準的に行われており、動的なスケーリングや高可用性の確保が可能です。
まとめ
ハイパーバイザ型仮想化は、ハードウェアレベルでの高度なリソース管理を可能にする仮想化技術です。
性能面で優れ、複数OSの同時運用も実現可能なため、企業のインフラやクラウド基盤において重要な役割を果たしています。
特に、準仮想化は高パフォーマンスを、完全仮想化は高い互換性を提供し、利用シーンによって選択肢が広がります。
今後も、セキュリティや効率性が求められるIT環境では、ハイパーバイザ型仮想化の活用がさらに進んでいくでしょう。