現代のインターネットやスマートフォン通信の中核を成す技術、それがパケット通信(packet communication)です。
かつて主流だった回線交換方式からの大きな転換点となり、データ通信の効率性・柔軟性を大きく向上させました。
本記事では、パケット通信とは何かという基本から、技術的な仕組み、回線交換との違い、さらには現在のITインフラでの応用例までを、ITエンジニア目線で詳しく解説します。
パケット通信の基礎知識
パケット通信とは?
パケット通信とは、通信データを一定のサイズに分割し、それぞれに制御情報(ヘッダー)を付けてネットワーク上で個別に転送する通信方式です。
各データ単位はパケット(packet)と呼ばれ、まるで小包を個別に届けるようにネットワークを通じて送受信されます。
この方式では、通信経路を占有せずに効率的なデータ転送が可能です。
技術的な仕組み
1. データ分割と制御情報の付加
送信側のデバイスでは、送信データが通信プロトコル(例:IP、TCP)に従ってパケットへ分割され、それぞれに以下のような情報が付加されます:
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送信元IPアドレス
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宛先IPアドレス
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シーケンス番号
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誤り検出・訂正情報
2. ストア・アンド・フォワード方式
パケット通信では、中継ノード(ルーターやスイッチなど)が一時的にパケットをバッファに格納(蓄積)し、順次次のノードへ転送(転送)します。
これを「ストア・アンド・フォワード方式」と呼びます。
3. 受信側での再構築
受信側では、バラバラに届いたパケットをシーケンス番号に基づいて並べ直し、元のデータを復元します。
パケット通信と回線交換の違い
パケット通信は、リアルタイム性よりも柔軟性・効率性を重視しており、データ通信に最適です。
一方、回線交換はかつてのアナログ電話に代表されるように一定の品質が必要な音声通話に向いていました。
パケット通信の主な特徴とメリット
1. 資源の効率利用
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ネットワーク機器や通信回線の帯域を占有しない
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同時に多数の通信が成立可能(マルチプレクシング)
2. 通信環境に強い柔軟性
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異なる通信速度や通信プロトコル間でも接続可能
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経路選択・再送制御など、柔軟なネットワーク管理が可能
3. エラー制御の充実
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CRC、チェックサムによる誤り検出
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ARQ(自動再送要求)による信頼性確保
4. 優先制御とQoS(Quality of Service)
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音声通話などリアルタイムデータには優先的な転送制御が可能
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ネットワーク負荷に応じて動的に経路を変更できる
パケット通信の応用と実例
インターネット通信の基盤技術
インターネットプロトコルスイート(TCP/IP)は、パケット通信を前提に設計されており、全てのWebブラウジング、メール、動画配信などがこの技術の上に成り立っています。
LANやWANでの使用
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LAN内ではイーサネットによるパケット通信が主流
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WANではMPLSやIP-VPNなどでパケットベースの経路制御が行われている
スマートフォンの音声通話(VoLTE)
従来の回線交換による音声通話は、現在ではパケット通信(VoLTE)へとシフトしています。
これにより、音声通話もインターネット経由で行われ、音質と効率の両立が実現されています。
まとめ
パケット通信は、現代のインターネット社会を支える不可欠な技術であり、その特徴は以下の通りです:
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データを小分けにして効率的に送信
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ネットワーク資源の共有と柔軟な経路制御が可能
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音声通話、ストリーミング、IoTなど幅広い分野に応用
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今後の5G・6G時代にも不可欠な基盤技術
今後さらに発展するIT・通信インフラの中核技術として、パケット通信はその重要性を増し続けています。
技術者としては、その仕組みや運用方法をしっかりと理解し、応用できる力が求められます。
さらに参考してください:
バケットソートとは?高速かつ線形時間で動作する非比較ソートアルゴリズムの仕組みと応用