現代ではインターネットが当たり前となりましたが、その前段階として大きな役割を果たしたのが「パソコン通信(online service)」です。
本記事では、パソコン通信の仕組み、提供されていたサービスの内容、そしてその歴史的背景についてIT視点から詳しく解説します。
パソコン通信というキーワードを通じて、今では失われつつある技術の価値を再認識してみましょう。
パソコン通信とは何か?
パソコン通信(online service)の基本的な仕組み
パソコン通信とは、インターネットが普及する前に使われていた、ホストコンピュータを介してパソコン同士でデータを送受信する会員制のオンライン通信サービスです。
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通信は「ホスト局」と呼ばれる中央サーバーを経由して行われ、ユーザーはモデムや音響カプラを使って電話回線経由でホストにダイヤルアップ接続していました。
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接続方式はアナログ回線を使用するため、今のような高速通信は不可能であり、文字ベースの通信が主流でした。
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直接ユーザー同士が通信することはできず、すべてホストを中継するモデルでした。
通信プロトコルとデータ形式
当時の通信プロトコルやデータフォーマットは標準化されておらず、各ホストシステムが独自に開発していたのが特徴です。
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基本的にはテキストデータのやり取りが中心で、画像や実行ファイルなどのバイナリデータはテキストに変換して送信されました(uuencodeなどの形式)。
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これはIT技術的にも興味深く、限られた帯域やハードウェア性能の中で効率的な通信を行うための創意工夫がなされていました。
提供されていた主なサービス
代表的な通信サービスの種類
パソコン通信では、以下のようなサービスが提供されていました:
電子掲示板(BBS)
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会員が自由に書き込みでき、スレッド形式で情報を交換。
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テーマ別にカテゴリが分かれており、専門性の高いコミュニティ形成が可能でした。
電子メール
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会員同士で非公開のテキストメッセージをやり取りできるサービス。
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モダンなメールシステムの原型ともいえる存在です。
ファイルアーカイブ
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フリーソフトやドライバ、画像などのデータファイルをユーザー同士で交換。
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BBSと連携してソフトウェアのレビューやサポートが活発に行われていました。
チャット
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会員がリアルタイムで文字メッセージをやり取り。
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リアルタイム性は限定的でしたが、ITコミュニティの形成に大きく貢献しました。
フォーラムとSIG(Special Interest Group)
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上記のサービスをテーマ別にまとめた形で、フォーラムやSIG(特定の関心領域に特化したグループ)が構築されました。
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IT系ユーザーや研究者による技術情報の交換も盛んに行われていました。
商用と個人ホストの違い
商用パソコン通信サービスの興隆
1980年代〜1990年代にかけて、日本では以下のような大規模商用サービスが展開されていました:
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NIFTY SERVE(富士通と日商岩井による合弁)
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PC-VAN(NEC)
それぞれ約200万人以上の会員を誇り、パソコン通信の黄金期を形成しました。
個人運営のホストも多数存在
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小規模なホストは数名のメンバーで運営されることも多く、サークル的な雰囲気で利用されていました。
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プライベートネットワークの先駆けとも言える形で、オープンとクローズドなネットワーク運営の在り方を示しました。
パソコン通信の衰退とインターネットの台頭
1990年代後半の転換期
1995年以降、インターネットの一般家庭への普及が始まると、パソコン通信は急速に衰退していきました。
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TCP/IPベースのオープンな通信方式が主流となり、ホスト中心のクローズドなネットワークは役割を終えました。
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多くのパソコン通信サービスは2000年代初頭までに終了しました。
まとめ
パソコン通信(online service)は、現在のインターネット社会の基盤を築いた先駆的なIT通信インフラでした。
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電子掲示板やチャット、電子メールといった今でも使われている概念は、すでにこの時代に誕生していました。
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独自プロトコルやモデムによる接続といった制約の中でも、IT技術者たちは工夫を凝らし、豊かなオンライン文化を育ててきたのです。
本記事を通じて、パソコン通信というキーワードの持つ技術的・歴史的価値を再認識し、インターネットの今をより深く理解する一助となれば幸いです。
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