ルートフラッピング(route flapping)とは、ネットワークにおいてある経路の情報が短期間に頻繁に変動する現象です。
これにより、周囲のルータは経路情報の再計算を頻繁に行う必要があり、結果としてネットワークのパフォーマンスが低下し、場合によっては広範囲なネットワーク障害を引き起こす可能性があります。
本記事では、ルートフラッピングの概要、原因、影響、そして効果的な対策方法について詳しく解説します。
ルートフラッピングとは?
ルートフラッピングの定義
ルートフラッピングは、ネットワーク上で経路情報が短時間にわたって頻繁に変更される状態を指します。
これは、ルータが経路の追加や削除を繰り返すことによって引き起こされ、ネットワーク全体に対して以下のような影響を与えることがあります。
- ルータの負荷増大:経路情報が頻繁に変更されると、ルータはその都度経路の再計算を行う必要があります。これにより、処理負荷が急増し、ルータのパフォーマンスが低下します。
- ネットワークの遅延:頻繁な経路の変動は、パケットの遅延やパケットロスを引き起こす可能性があります。
- 広範囲な障害:ルートフラッピングが複数のルータに連鎖的に広がることで、ネットワーク全体に障害を引き起こすことがあります。
ルートフラッピングの原因
ルートフラッピングを引き起こす原因には、以下のようなものがあります:
- ハードウェアの故障:ルータやスイッチのハードウェアの故障や不具合により、経路が不安定になることがあります。
- 電源や回線の問題:電源の問題や回線の不具合が原因で、ルータが再起動を繰り返すことがあります。
- 操作ミスや設定ミス:ネットワークの設定ミスや操作ミスにより、経路情報が不安定になることがあります。
- 経路情報の誤設定:経路情報の設定ミスや誤配置も、経路の変動を引き起こす原因となります。
ルートフラッピングの影響
ネットワークパフォーマンスへの影響
ルートフラッピングが発生すると、ネットワークのパフォーマンスが大きく低下します。
具体的には、以下のような影響があります:
- ルータのリソース消費:ルータは経路情報の再計算を頻繁に行う必要があり、その結果、CPUやメモリのリソースが消費されます。
- 遅延とパケットロス:経路変更が頻繁に行われると、パケットが適切な経路で転送されず、遅延やパケットロスが発生する可能性があります。
- ネットワーク全体の不安定性:複数のルータで経路情報が変動することにより、ネットワーク全体の安定性が損なわれることがあります。
実際の障害例
ルートフラッピングによる障害の代表例として、2007年のNTT東日本のフレッツ網で発生した大規模障害が挙げられます。
この障害では、一台のルータの故障がきっかけとなり、2000台のルータが停止するという大規模なネットワーク障害が発生しました。
このような事例は、ルートフラッピングがネットワーク全体に与える影響の大きさを示しています。
ルートフラッピングへの対策
ルートフラップダンピング
インターネットのルーティングで使用される**BGP(Border Gateway Protocol)**では、ルートフラッピングの影響を軽減するために、ルートフラップダンピング(route flap damping)という仕組みが実装されています。
これは、頻繁に変更される経路を一時的に無視し、一定の時間が経過してから再度その経路を検証する仕組みです。
この方法により、以下の効果が得られます:
- 経路情報の安定化:短期間に経路が頻繁に変更される場合、その経路を一時的に無視することで、経路情報の安定性を保つことができます。
- ルータの負荷軽減:経路変更の頻度を制限することで、ルータの負荷を軽減し、パフォーマンスを維持することができます。
その他の対策
- ネットワークの監視:ネットワークの状態を常に監視し、ルートフラッピングの兆候を早期に発見することで、迅速に対策を講じることができます。
- 設定の見直し:ネットワークの設定を定期的に見直し、設定ミスや誤配置を防ぐことで、ルートフラッピングの発生を抑制します。
- ハードウェアのメンテナンス:ハードウェアや回線の定期的なメンテナンスを行い、故障や不具合を未然に防ぐことが重要です。
まとめ
ルートフラッピングは、ネットワークにおける経路情報の頻繁な変動によって引き起こされる問題であり、ネットワーク全体に対して重大な影響を及ぼす可能性があります。
ルートフラッピングの原因を理解し、適切な対策を講じることで、ネットワークの安定性を保ち、パフォーマンスを維持することができます。
特に、ルートフラップダンピングのような技術的な対策を活用することで、ルートフラッピングによる影響を最小限に抑えることが可能です。