BNF(Backus-Naur Form)は、プログラミング言語やプロトコル、マークアップ言語などの構文(文法)を形式的に定義するためのメタ言語です。
多くのコンピュータ言語は、その構文仕様をBNFまたはその派生形で記述しています。
この記事では、BNFの基本的な概念、構文ルール、実際の使用例を交えて、ITエンジニア向けに詳しく解説します。
また、拡張BNF(EBNF)との違いや応用例についても紹介します。
BNFとは何か?その基礎を理解する
BNFの定義と目的
BNF(Backus-Naur Form)とは、人工言語(主にコンピュータ言語)の構文規則を記述するためのメタ言語の一種です。
文法のルールを形式的に記述することで、構文解析(パース)やコンパイラ設計などに応用されます。
この記法は、1959年にジョン・バッカス(John Backus)によって提案され、その後ピーター・ナウア(Peter Naur)によって改良されました。
1960年のALGOL 60の仕様定義において初めて正式採用されました。
BNFの構文ルールと基本要素
基本構文:「非終端記号」と「終端記号」
BNFでは、以下のような構文を使って文法を記述します:
-
非終端記号(non-terminal):定義可能な記号。
<>
で囲まれる。 -
終端記号(terminal):それ以上分解されない記号(キーワードや記号など)。
例1:連接(sequence)
この例では、「都道府県」と「市区町村」を連続して書くことで、1つの「住所」を構成することを意味します。
例2:選択(alternation)
この構文は、「true」または「false」のいずれかを選択できることを示します。
記述ルールの特徴
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山括弧(<>):BNFの構文内で定義される識別子を囲う。
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::=
:定義演算子。左辺の非終端記号を右辺で定義する。 -
|
(パイプ):複数の選択肢を示す。
BNFの応用と利用シーン
プログラミング言語の仕様定義
BNFは、C言語、Pascal、Java、Pythonなど、多くのプログラミング言語の構文を形式的に記述する際に使用されています。
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例:C言語の構文定義(簡易例)
プロトコル仕様・データ形式の定義
インターネットの通信プロトコル(例:HTTP、SMTP)や、構造化データ形式(例:JSON、XML)でもBNFや拡張BNF(EBNF)が利用されます。
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XMLはBNF(正確にはEBNF)に基づいて構文定義されています。
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RFC文書(Request for Comments)
拡張BNF(EBNF)との違いと注意点
EBNFとは?
EBNF(Extended BNF)は、BNFをより柔軟に、簡潔に記述できるように拡張した記法です。
ループ、オプション、繰り返しなどを明示的に表現できます。
EBNFの構文例:
このように、{}
を使って繰り返しを表現したり、[]
でオプションを表すことが可能です。
実装上の注意点
EBNFは言語仕様やツールによって記述スタイルが異なる場合があり、どのバージョン・形式に準拠しているかを明示する必要があります。
まとめ
BNF(Backus-Naur Form)は、コンピュータ言語の構文ルールを明確かつ形式的に記述するために不可欠な記法です。
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BNFでは、非終端記号・終端記号・定義構文(::=)・選択記法(|)などを使って言語仕様を定義します。
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プログラミング言語、プロトコル仕様、マークアップ言語など幅広いIT分野で利用されています。
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より柔軟な記述を可能にするEBNF(拡張BNF)も多く使用されており、用途に応じた選択が重要です。
BNFは、システム設計者やコンパイラ開発者、プロトコル設計者にとって基本中の基本とも言えるツールです。
構文を形式的に理解するための出発点として、BNFの習得は極めて重要です。
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