BPDU(Bridge Protocol Data Unit)は、コンピュータネットワークにおいて、スイッチ間でやり取りされる特殊なイーサネットフレームであり、スパニングツリー制御において重要な役割を果たします。
BPDUは、ネットワーク内でのループを防ぎ、冗長経路を管理するために使用されます。
本記事では、BPDUの基本的な概念から、スパニングツリー制御における具体的な役割、BPDUの構造、バージョンの違い、設定方法までを詳しく解説します。
BPDUとは?
BPDUの基本概念
BPDU(Bridge Protocol Data Unit)は、スパニングツリー制御において、スイッチ間で交換される制御情報を含むイーサネットフレームの一種です。
これにより、ネットワーク内でのループを防ぎ、冗長経路を管理することが可能となります。
スパニングツリー制御の目的
スパニングツリー制御は、複数のスイッチが接続されたネットワークにおいて、意図しないループを防ぐためのプロトコルです。
BPDUは、この制御プロセスの中で、スイッチ間での情報交換を行い、最適な経路を選択するために使用されます。
BPDUの構造と主要要素
BPDUは、以下の主要な情報を含んでいます。
1. ブリッジID(Bridge ID)
ブリッジIDは、スイッチを一意に識別するための情報で、以下の2つの要素で構成されます。
- ブリッジプライオリティ(Bridge Priority):スイッチの優先度を示す値で、0から61440の範囲で設定可能です。
デフォルト値は32768です。
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MACアドレス:スイッチの物理アドレスで、6バイトの値です。
これらを組み合わせて、スイッチを一意に識別するブリッジIDが形成されます。
2. ルートブリッジID(Root Bridge ID)
ルートブリッジIDは、ネットワーク内で最も優先度が高い(最小のブリッジIDを持つ)スイッチのIDです。
スパニングツリー制御において、全てのスイッチはこのルートブリッジを基準に経路を計算します。
3. パスコスト(Path Cost)
パスコストは、ルートブリッジからの距離を示す値で、各ポートの速度に応じて設定されます。
例えば、1Gbpsのリンクではパスコストは4、100Mbpsのリンクでは19となります。
スイッチは、このパスコストを基に最適な経路を選択します。
4. その他の情報
BPDUには、上記の他にも以下の情報が含まれます。
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ルートポート(Root Port):スイッチがルートブリッジへ到達するための最適なポート。
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指定ポート(Designated Port):各セグメントで最適な経路を提供するポート。
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ポートステータス:ポートがブロッキング、リスニング、ラーニング、フォワーディングのいずれの状態にあるかを示す。
BPDUのバージョンとその違い
BPDUには、スパニングツリーのバージョンに応じて異なる仕様があります。
1. バージョン0(STP)
最初のBPDU仕様で、IEEE 802.1D規格に基づいています。
スイッチ間での情報交換に使用され、ルートブリッジの選出や経路計算に利用されます。
2. バージョン2(RSTP)
改良版のBPDU仕様で、IEEE 802.1w規格に基づいています。
STPに比べて収束時間が短縮され、より迅速なネットワークの回復が可能となります。
3. バージョン3(MSTP)
複数のVLANを制御できるBPDU仕様で、IEEE 802.1s規格に基づいています。
各VLANごとにスパニングツリーを構成することで、ネットワークの効率性と柔軟性が向上します。
BPDUの活用と設定方法
BPDUは、スパニングツリー制御の中で重要な役割を果たします。
以下に、BPDUの活用方法と設定例を示します。
1. BPDUの監視と制御
BPDUを監視することで、ネットワーク内での不正な接続や設定ミスを検出することができます。
例えば、BPDUガード機能を有効にすることで、不正なBPDUを受信したポートを自動的にシャットダウンし、ネットワークの安定性を保つことができます。
2. BPDUの設定例(Ciscoスイッチの場合)
上記の設定により、VLAN 1のスイッチの優先度を4096に設定し、BPDUガード機能を有効にしています。
まとめ
BPDUは、スパニングツリー制御において、ネットワークの安定性と効率性を確保するために不可欠な要素です。
スイッチ間での情報交換を通じて、最適な経路の選択やループの防止、冗長経路の管理が行われます。
BPDUの理解と適切な設定により、信頼性の高いネットワーク構築が可能となります。