BPM(Business Process Management)は、企業の業務プロセスを継続的に可視化・最適化・自動化するためのアプローチであり、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代の基盤とも言える手法です。
特にIT部門や情報システム部門においては、BPMツールやBPMS(BPM Suite)を活用することで、複雑な業務プロセスを論理的に管理し、組織全体の生産性を飛躍的に向上させることが可能です。
この記事では、BPMの基本概念からIT分野における実践活用例、導入効果、導入時のポイントまでをわかりやすく解説していきます。
BPMとは何か?基本から理解しよう
BPMの定義
BPM(ビジネスプロセスマネジメント)とは、企業内での業務の流れ(プロセス)を分析・設計・実行・監視・改善する活動を継続的に行う手法です。
主に情報システムやBPM専用ツールを利用しながら、PDCAサイクルを回し、業務を最適化していきます。
この手法では以下のステップが基本となります:
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プロセスの定義・設計:業務の流れをモデリングツールで可視化
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実行と記録:設計したプロセス通りに業務を遂行し、データを収集
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分析と改善:得られたデータをもとにボトルネックを特定・改善
IT分野でのBPM活用:なぜ重要なのか?
システム統合とプロセス自動化の中核
BPMは、既存の業務システム(ERP、CRM、SFAなど)と連携し、業務フローを横断的に可視化・自動化できます。
たとえば、受注から請求、出荷までの一連の流れをBPMツールで統一的に管理することで、部門間の連携ロスを大幅に削減できます。
ノーコード/ローコードによる業務改善
近年のBPMツールにはノーコード/ローコード開発機能が搭載されており、エンジニアでなくても簡単にワークフローを構築・修正できます。IT人材不足が叫ばれる中、業務部門主導で業務改善を推進できるのは大きな強みです。
RPAやAIとの連携
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI技術と組み合わせることで、BPMはさらに進化します。定型業務をBPMが制御しつつ、RPAが実行し、AIがデータ分析を行うことで、真の業務改革が実現します。
BPMツール(BPMS)の主要機能と特徴
プロセスモデリング機能
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BPMN(Business Process Model and Notation)による視覚的な業務設計
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ドラッグ&ドロップで業務フローを簡単に設計可能
実行エンジン
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モデルに基づいた業務を自動で実行
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タスクの割り当て、通知、進捗管理をシステムで管理
分析・モニタリング
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リアルタイムのKPI可視化
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ボトルネックや滞留ポイントの特定が容易
シミュレーションと改善支援
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「もしこうしたらどうなるか?」のプロセスシミュレーション
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改善後の効果予測も可能
BPMとBPRの違いとは?
BPR(Business Process Reengineering)が抜本的な業務改革を意味するのに対し、BPMは小さな改善を積み重ねるPDCA的アプローチである点が異なります。
BPRの前段階としてBPMで現状を可視化・理解することが成功の鍵とも言えるでしょう。
BPM導入のメリットと課題
メリット
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業務効率の向上:作業の重複や無駄を削減
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可視化によるガバナンス強化:業務フローの透明性が高まり、内部統制が強化
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変化への柔軟な対応:法令変更や顧客ニーズに迅速対応可能
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プロジェクト全体の進捗可視化:PMOや経営層にも有益
課題と注意点
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導入コストや工数がかかる
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社内の業務知識を形式知化する必要がある
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現場の理解と協力が不可欠(属人化の打破)
導入成功のためのポイント
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スモールスタートを意識する
いきなり全社導入せず、部門単位でトライアル実施 -
業務プロセスの棚卸しを行う
現場とのヒアリングを通じて、現状の問題点を把握 -
IT部門と業務部門の連携
両部門の協力がなければBPMは成功しない -
継続的な運用体制を整備
導入して終わりではなく、常に改善し続けることが重要
まとめ
BPM(ビジネスプロセスマネジメント)は、業務の継続的な改善と効率化を実現するための戦略的IT手法であり、企業競争力の強化に直結するアプローチです。
特にデジタル化が進む現代では、BPMを活用して業務の可視化・自動化・最適化を図ることが、企業の成長戦略に不可欠となっています。
BPMツールやBPMSの活用により、ノーコードでの業務改善やRPA連携による自動化など、多様な可能性が広がっており、IT部門はもちろん、業務部門も巻き込んだ全社的な取り組みが求められます。