LANアナライザ(LAN analyzer)とは、LAN(ローカルエリアネットワーク)内の通信を監視・解析するためのツールです。
パケットアナライザやネットワークプロトコルアナライザとも呼ばれ、トラブルシューティングやネットワークの最適化、セキュリティ診断に欠かせないツールです。
本記事では、LANアナライザの基本的な仕組みから、導入方法、活用シーン、さらには悪用のリスクまで、ITエンジニア視点で実践的に解説します。
LANアナライザとは?
LANアナライザの定義
LANアナライザとは、LAN内を流れるパケットをリアルタイムで監視・記録・解析し、その通信内容を可視化するツールの総称です。
ソフトウェアとして提供されるものが主流ですが、専用のハードウェアアプライアンスも存在します。
一般的には以下のような名前で呼ばれることもあります:
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スニッファ(sniffer)
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パケットキャプチャツール
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プロトコルアナライザ
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ネットワークトラフィックモニタ
主な用途
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ネットワーク障害の原因特定
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通信遅延やパケットロスの分析
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通信プロトコルの動作確認
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不審な通信の検出(セキュリティ診断)
LANアナライザの動作原理と種類
プロミスキャスモードとは?
通常、コンピュータのネットワークインターフェースカード(NIC)は、自分宛のパケットしか受信しません。
しかし、「プロミスキャスモード(promiscuous mode)」を有効にすると、他の宛先へのパケットもすべて受信可能になります。
LANアナライザはこの機能を利用し、LANを通過するすべての通信をキャプチャします。
また、スイッチングハブを使用している場合は、「ミラーポート(ポートミラーリング)」機能を用いて任意の通信を監視することができます。
ハードウェア vs ソフトウェア
具体的な活用シーン
トラブルシューティング
LANアナライザはネットワーク障害時の原因追及に大いに役立ちます。
たとえば、DNSの名前解決が遅い場合、DNSクエリとレスポンスの遅延を確認することでボトルネックを特定できます。
セキュリティ監視
暗号化されていない通信が行われている場合、LANアナライザを使ってパスワードや個人情報が平文で送られていることを検出することが可能です。
このため、社内ネットワークのセキュリティ監査にも活用されます。
トラフィック分析・統計取得
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時間帯別の通信量
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プロトコル別の使用割合(例:HTTP、FTP、SSH)
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通信元・通信先のIPアドレス統計
こうした情報はネットワークの最適化や設備増強の判断材料となります。
LANアナライザのリスクと注意点
不正利用の危険性
LANアナライザは強力な監視ツールである反面、悪用も可能です。
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盗聴(スニッフィング):暗号化されていない通信の傍受
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内部不正:LAN内のPCに仕掛けられたアナライザからの情報流出
過去には、企業内ネットワークに不正に設置されたLANアナライザが定期的にログを外部へ送信していたという実例もあります。
対策方法
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重要情報は常に暗号化(HTTPS、SSH、VPN)
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スイッチのポート監視・MACアドレス制限
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不審な通信のログ監視・IDSの導入
代表的なLANアナライザツール
まとめ
LANアナライザは、ネットワークの健全性を保つうえで不可欠なツールです。
通信パケットの監視・解析・可視化により、トラブル解決やセキュリティ強化に貢献します。
しかしながら、悪用リスクも高いため、適切な設定・運用・アクセス管理が求められます。
ネットワーク管理者やセキュリティエンジニアを目指す方にとって、LANアナライザの理解と活用スキルは必須の知識です。この記事がその第一歩となれば幸いです。