大規模なシステムインフラを支える企業IT環境において、ストレージの選定は非常に重要です。
特に、バックアップやアーカイブのようにアクセス頻度が低く、しかし常時稼働が求められる用途には、コストと信頼性のバランスを取る必要があります。
そこで注目されているのが、**NL SASドライブ(NearLine SAS)**です。
この記事では、その仕組みや導入メリット、他のストレージとの違いなどを専門的視点で詳しく解説します。
NL SASドライブとは?
H2: NL SAS(NearLine Serial Attached SCSI)の基本概念
NL SASドライブとは、Serial Attached SCSI(SAS)接続を採用しつつ、**コストを抑えた大容量ハードディスクドライブ(HDD)**の一種です。
「NearLine(ニアライン)」は「near-online(ほぼ常時接続)」の略で、ストレージの応答性や利用頻度に基づく分類用語です。
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オンラインストレージ:高性能・高速アクセス(例:SSD、エンタープライズSAS HDD)
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ニアラインストレージ:中性能・低コスト(例:NL SAS、Midline SAS)
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オフラインストレージ:低頻度アクセス(例:テープライブラリ、Blu-rayアーカイブ)
NL SASは、この中でもコストパフォーマンスに優れ、アクセス頻度が中〜低で常時接続が求められる環境に適しています。
H2: 「Midline SAS」や「MDL SAS」との違いは?
実際には、NL SAS(NearLine SAS)、Midline SAS(ミッドラインSAS)、MDL SASは基本的に同義で、ベンダーやマーケティングによる呼称の違いに過ぎません。
共通する特徴は以下の通りです:
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インターフェース:SAS(6Gbpsまたは12Gbps)
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回転数:7,200rpmが主流
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容量:2TB〜18TBと大容量に対応
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MTBF(平均故障間隔):SATAより高く、エンタープライズ向けに最適化
NL SASドライブの用途と導入メリット
H2: バックアップ/アーカイブ用途に最適
NL SASは、以下のようなシステム用途に最適です:
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定期バックアップサーバー
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ログデータの保管
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監査記録のアーカイブ
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DWH(データウェアハウス)のCold Tier領域
例えば、大企業の会計システムにおいて、過去5年間分のトランザクションログを保持する場合、NL SASを使えば、オンライン並みの常時接続性を確保しながらコストを抑えることができます。
H2: エンタープライズ向けSATAとの比較
SATAよりも信頼性が高く、SASバックプレーンにそのまま接続できる点も大きな利点です。
特にエンタープライズレベルのRAID構成を行う場合、SASインターフェースの恩恵を最大限活かせます。
NL SAS導入時の注意点
H2: パフォーマンス要求の見極め
NL SASは高頻度アクセスや低レイテンシを求められるトランザクション処理には不向きです。
そのため、以下のような要求がある場合は、より高速なSAS HDDやSSDを選択するべきです:
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OLTP(オンライン・トランザクション処理)
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リアルタイムデータ処理
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データベースのインデックス検索
H2: コントローラやファームウェアとの互換性
導入前には、RAIDコントローラやストレージ筐体との互換性の確認が重要です。
NL SASは一般的なSAS環境で動作するものの、ファームウェアの制限や性能チューニング設定に注意が必要です。
まとめ
NL SASドライブ(NearLine SAS)は、大容量・中速・中信頼性をバランス良く備えたストレージソリューションであり、特にバックアップやアーカイブといったセカンダリデータの保管に最適です。
オンラインストレージのコストがネックになる環境や、エンタープライズ向けSATAでは信頼性が不足する場面で、NL SASは理想的な選択肢となるでしょう。
企業のITインフラ担当者にとっては、**ストレージの階層化戦略(ティアリング)**の一環として、NL SASの導入をぜひ検討してみてください。