SMP(Symmetric Multiprocessing/対称型マルチプロセッシング)は、マルチコアCPUやマルチプロセッサ構成でよく使われる並列処理アーキテクチャです。
複数のプロセッサが対等な立場で処理を分担することで、システム全体の性能を飛躍的に向上させる仕組みとして、サーバーからスマートフォンまで幅広く導入されています。
この記事では、SMPの仕組み、シングルプロセッサとの違い、IT分野における応用事例、AMP(非対称型マルチプロセッシング)との比較などを詳しく解説します。
SMPとは何か?基本構造とその特徴
SMP(Symmetric Multiprocessing)の定義
SMPとは、同一システム内に複数のCPU(またはコア)を搭載し、それぞれが対等な関係で処理を担当する構成です。
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すべてのCPUがメモリ・I/O・OSリソースに均等にアクセス
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処理タスクはOSによって各CPUに分散してスケジューリング
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主従関係がないため、負荷分散と高い可用性が得られる
この構成により、単一のCPU構成と比較して、スループット(処理能力)が向上し、マルチスレッド・マルチプロセスの効率的な実行が可能となります。
シングルプロセッサとの違い
SMPの課題
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複数CPU間でキャッシュ整合性やメモリ競合が発生しやすい
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OS側のスケジューラや同期処理の複雑化
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リアルタイム性が求められる用途では不向きなケースも
ITにおけるSMPの応用事例
サーバーシステム
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Webサーバーやデータベースサーバーなどでは、複数クライアントからの同時リクエストを効率的に処理するために、SMP構成が主流です。
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OSはLinuxやWindows Serverなど、SMP対応スケジューラを備えたものが必須。
デスクトップPC・ワークステーション
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3Dレンダリングや科学技術計算、機械学習など高負荷なタスクを同時実行する場面で活用。
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近年のCPU(例:Intel Core i9やAMD Ryzen Threadripper)はSMPベースのマルチコア設計が標準。
モバイルデバイス
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スマートフォンやタブレットのSoC(System on Chip)では、ARMベースのマルチコア構成によってSMPが一般的に採用。
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Android OSやiOSもSMPに最適化されたカーネルを持ち、バッテリー消費とのバランスをとりながら処理能力を引き出している。
AMP(非対称型マルチプロセッシング)との比較
AMP(Asymmetric Multiprocessing)とは?
AMP(非対称型マルチプロセッシング)では、各CPUに役割の違い(制御系/処理系)があり、対称性が存在しません。典型的な用途は次の通り:
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リアルタイム処理向け組込みシステム(例:自動車のECU、産業用制御機器)
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CPU AがOSを実行し、CPU BがI/O処理を担当するなどの明確な役割分担
SMPとAMPの違い
現代のCPUアーキテクチャとSMPの関係
現在の多くのプロセッサは、複数のコアを持ち、SMP構成を前提に設計されています。
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x86/x64プロセッサ:Intel、AMDのマルチコアCPUは、すべてSMP対応
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ARMプロセッサ:Cortex-AシリーズなどではSMPサポートが標準
また、LinuxやFreeBSDなどのOSS系OS、AndroidやWindowsも、SMP対応のスケジューラを持ち、最適なCPU割り当てを実現しています。
まとめ
SMP(Symmetric Multiprocessing)は、複数のCPUやコアを対称的に活用するアーキテクチャであり、現代のコンピューティングにおける基本技術です。
以下のポイントを押さえておきましょう:
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複数プロセッサを対等に扱うことで処理性能が向上
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サーバーからスマートフォンまで、幅広いITデバイスに採用
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OSやソフトウェアのスケジューリング技術が重要な役割を担う
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AMPとの違いを理解し、用途に応じたアーキテクチャ選択が必要
SMPは単なる構造ではなく、システム設計・プログラム開発・運用最適化の観点からも極めて重要な要素です。現代のITインフラを支える基盤技術として、今後も進化が期待されます。