VLAN(Virtual LAN)は、物理的な配線構成に依存せずにネットワークを論理的に分割・管理できる技術です。
社内ネットワークのセキュリティ強化、通信効率の向上、柔軟な構成変更を可能にするため、企業ネットワークの基本技術として広く利用されています。
本記事では、VLANの基本的な仕組みから種類、活用例、実装方法までを専門的な観点で解説します。
ITインフラの設計や管理に関わる方は必見の内容です。
VLANの基礎と仕組み
VLANとは何か?
VLAN(Virtual LAN)とは、物理的な接続形態に依存せずにネットワークを論理的に分割する技術です。
1台のスイッチに接続された複数の端末を、仮想的にグループ分けして独立したLANのように運用できます。
VLANの仕組みと利点
VLANでは、ブロードキャストドメイン(ネットワーク全体に一斉送信される通信範囲)を仮想的に分割するため、以下のような利点があります。
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ネットワーク混雑の緩和:ブロードキャストトラフィックを制限
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セキュリティの向上:関係のない部門間の通信を遮断
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運用の柔軟性:機器の物理的な移動に影響されず構成可能
VLANの主な種類と構成方法
VLANの設定方式
ポートVLAN(ポートベースVLAN)
各ポートに固定でVLAN IDを割り当てる方式です。
もっともシンプルな構成で、初心者にも扱いやすく、多くの中小規模ネットワークで利用されています。
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例:ポート1〜4 → VLAN 10、ポート5〜8 → VLAN 20
タグVLAN(IEEE 802.1Q)
イーサネットフレームにVLANタグ(VLAN ID)を付与してネットワーク上に流通させる方式。
複数のスイッチをまたがるVLAN構成が可能となり、大規模ネットワークに適しています。
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タグの付加と剥離は、トランクポートと呼ばれる特定のポートで行われます。
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例:部門Aの端末が異なるフロアでも同じVLANに属するように設定
動的なVLAN構成
スタティックVLAN
あらかじめポートごとにVLANを手動で設定する方式。
管理が明確ですが、機器の移動や変更時に再設定が必要です。
ダイナミックVLAN
接続された機器の情報(MACアドレスやIPアドレス、ユーザー情報など)に基づいてVLANを自動割り当てします。
大規模ネットワークや人の出入りが頻繁な環境で有効です。
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MACベースVLAN:機器のMACアドレスを識別
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サブネットベースVLAN:IPアドレスで分類
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認証ベースVLAN:ユーザーのログイン情報でVLANを選択
VLANの実際の利用シーンとメリット
VLANの導入メリット
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セキュリティ強化:異なる部門の端末間通信を制限
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柔軟なネットワーク構成:配線を変えずに論理的な変更が可能
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障害時の影響範囲限定:ネットワークの分割で障害波及を防止
実際の活用例
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企業の部門ごとのネットワーク分離(営業部、経理部、技術部など)
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BYOD環境での社員端末と来客端末の分離
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大学など教育機関での教員・学生・ゲストのネットワーク分離
VLAN導入の注意点
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VLAN間通信が必要な場合はルータまたはL3スイッチによるルーティングが必須
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設定ミスによる通信断やセキュリティホールに注意
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タグ設定やトランクポート設定に不慣れな場合は導入ハードルが高い可能性あり
まとめ
VLAN(Virtual LAN)は、企業や団体における柔軟でセキュアなネットワーク設計を可能にする不可欠な技術です。
ポート単位での設定から、動的なユーザー認証ベースの構成まで、さまざまな導入方法が存在します。
タグVLANやダイナミックVLANを活用すれば、大規模かつ複雑なネットワークも効率よく管理できます。
ネットワークエンジニアやインフラ担当者は、VLANの基本から実装パターンまで正確に理解し、組織のニーズに最適なネットワーク設計を行うことが重要です。