Windows NLB(Network Load Balancing)は、Windows Serverに標準搭載されている負荷分散機能です。
専用のロードバランサーを使用せずに複数のサーバを1つのシステムとして機能させることができ、可用性とスケーラビリティを向上させる手段として広く利用されています。
本記事では、Windows NLBの基本的な仕組みから構成例、ユニキャスト・マルチキャストモードの違い、導入時の注意点まで、ITエンジニア向けに詳しく解説します。
Windows NLBとは?
ネットワーク負荷分散の定義
Network Load Balancing(NLB)は、複数のサーバに対して外部からのトラフィックを均等に分散する技術です。特にWebサーバ、ファイルサーバ、アプリケーションサーバなど、リクエストが集中するサービスにおいて、パフォーマンスの向上とサービスの継続性確保を目的として使用されます。
Windows ServerにおけるNLBの役割
Windows NLBは、外部からのアクセスを仮想IPアドレス(VIP)に集約し、構成された各ノード(サーバ)に自動的に分散することで、ユーザーから見れば一台の仮想的なサーバにアクセスしているかのように見える仕組みです。
例:
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VIP(仮想IP):192.168.0.100
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ノード1:192.168.0.101
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ノード2:192.168.0.102
外部のユーザーが192.168.0.100にアクセスすると、NLB機能によりリクエストが自動でノード1またはノード2に割り当てられます。
構成要素と動作モード
仮想IPアドレス(VIP)の活用
NLBクラスタ内のすべてのサーバには個別のIPアドレスと、全ノード共通のVIPが設定されます。
このVIPに対するアクセスをもとに、NLBがリクエストの割り当てロジック(ラウンドロビン、加重配分など)に従って、適切なノードに転送を行います。
通信モードの違い:ユニキャスト vs マルチキャスト
ユニキャストモード
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同一のMACアドレスを複数ノードに設定
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全ノードに同一パケットがフラッディングされる
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ネットワーク機器の互換性が高く、広く使用可能
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ただし無駄なトラフィックが増える可能性あり
マルチキャストモード
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一つのIPに複数のMACアドレスを割り当てる方式
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通信効率が良い
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スイッチやルーターでの対応が必要(マルチキャストフィルタリングなど)
モード選定のポイント
ユニキャストは「シンプルさと互換性重視」、マルチキャストは「パフォーマンスと効率重視」という視点で選ぶのが一般的です。
NLB構築時の注意点と運用上のポイント
サービス構成の統一が前提
Windows NLBはあくまでリクエストの分散のみを行う仕組みです。
実際に提供されるサービス(WebアプリケーションやAPIなど)の設定やデータ同期は別途必要です。
たとえば、Webサーバの場合、以下が必要です:
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同一のWebコンテンツ構成
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セッション管理(ステートレス構成やセッションスティッキー対応)
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ログや設定ファイルの同期(rsync、DFSなどの使用)
NLBと他ツールの併用
負荷分散以外の運用効率を考慮する場合、以下のようなツールと併用するケースが多いです:
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構成管理ツール(Ansible, SCCM)
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監視ツール(Zabbix, Nagios)
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バックエンドデータベースの冗長化(AlwaysOn、クラスタリング)
適用シーンと導入メリット
適用例
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イントラネット内のWebポータルサイト
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システム管理者用のダッシュボード
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社内ファイル共有や業務用アプリケーション
導入による主な利点
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ロードバランサ不要でコスト削減
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Windows環境のみで完結する簡易構成
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高可用性の実現
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サービスダウンタイムの最小化
まとめ
Windows NLB(Network Load Balancing)は、Windows Serverの標準機能でありながら、高度な負荷分散と可用性向上を実現する強力なツールです。
VIPによるアクセス集中の制御、ユニキャスト/マルチキャストモードの選択、およびサービス構成の一貫性確保によって、コスト効率良くネットワーク全体のパフォーマンスを高めることができます。
中小規模のシステム構成でも、うまく導入すれば大規模環境に匹敵する可用性を得ることが可能です。
今後のインフラ設計やサーバ構成を見直す際には、ぜひWindows NLBの活用を検討してみてください。