システム開発やITプロジェクトの現場では、作業量の見積もりが成功のカギを握ります。
その中でも頻繁に使われるのが「人日(にんにち / person-day)」という単位です。
本記事では、人日の定義や計算方法、活用の注意点までを詳しく解説します。
正確な工数管理を目指すプロジェクトマネージャーや見積担当者は必読です。
人日(person-day)とは?
作業量を見積もるための基本単位
人日(person-day)とは、1人が1日間にこなせる作業量を「1」とする工数の単位です。
プロジェクトに必要な作業量を「人数 × 日数」で表現でき、業務の規模や必要リソースを可視化するために用いられます。
例:
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1人で5日かかる作業 → 5人日
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5人で2日かかる作業 → 10人日
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100人が半日で終える作業 → 50人日
このように、並列作業が可能であるという前提のもとで、効率的に工数を見積もることができます。
人日が有効に機能する条件
1. 作業の並列化が可能であること
人日の考え方は、人数を増やすことで作業が比例して早く進むことが前提です。
つまり、業務内容が明確で、タスクを細分化・並列化できる必要があります。
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適している例:テストデータ入力、マニュアル作業、PCの初期設定
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適していない例:高度な設計業務、要件定義、リーダーシップを伴う判断業務
2. 作業者間のスキル差が少ないこと
人日は、「誰がやっても同じペースで作業が進む」という仮定のもと成り立ちます。
メンバー間のスキルや経験値に差がある場合、実際の作業効率に大きなばらつきが出る可能性があるため、見積り精度が低下します。
人日の実用例と適用範囲
ITプロジェクトにおける利用シーン
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WebアプリのUIテスト(1人日 × 10画面)
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サーバー構築のパラメータ設定(0.5人日 × 台数)
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データ移行作業(2人日 × 旧システム単位)
工数管理ツールとの連携
JIRA、Redmine、Backlogなどのプロジェクト管理ツールでは、タスク単位で人日を登録・追跡できるため、進捗管理にも非常に便利です。
人日と人月の違い
人月(にんげつ)とは?
人月(person-month)は、1人が1か月(≒20営業日)に働ける作業量の単位で、大規模プロジェクトや長期計画の工数見積もりに使用されます。
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1人月 = 約20人日(週休2日、1か月20営業日想定)
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小規模作業や詳細見積り:人日
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中〜大規模プロジェクト:人月
このように、スケールや目的に応じて単位を使い分けることが、工数見積もりの精度向上につながります。
人日見積もりの注意点と限界
注意すべきポイント
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過度な単純化に注意:タスクの依存関係やボトルネックを無視すると、現実的でないスケジュールになる可能性が高い。
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人的リソースの品質差:同じ1人日でも、作業者のスキルにより成果物の質と速度が大きく異なる。
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管理工数の見落とし:会議、レビュー、ドキュメント作成などの非直接作業も見積もりに含めることが重要。
活用が難しいケース
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研究開発やAI学習など、成果や完了基準が曖昧な作業
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システム間の複雑なインテグレーション
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新技術導入などの予測困難な領域
まとめ
人日(person-day)は、プロジェクトの作業量を定量的に表現できる便利な単位です。
特に、作業内容が明確で分担可能なIT業務では非常に有効ですが、スキル差やタスクの非並列性を考慮しないと正確な見積りが困難になる点には注意が必要です。
人日と人月を適切に使い分けることで、より現実的で無理のないスケジュール設計が可能となります。
見積もりを精緻化するためにも、常に実績との比較・フィードバックを行い、精度を高めていきましょう。