光ファイバー(optical fiber)は、現代の高速通信インフラの中核を担う技術です。
ガラスやプラスチックなどの透明素材を利用して、光信号を用いた大容量・高速通信を実現しています。
この記事では、光ファイバーの構造・仕組み・通信技術としての応用・メリットと課題・種類の違い・非通信用途までを、IT分野の視点で深掘りして解説します。
ネットワークエンジニアやITインフラ担当者にとって必須の知識を体系的に学べます。
光ファイバーの基本構造と原理
光ファイバーの構成要素
光ファイバーケーブルは、以下の3層構造から成り立っています。
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コア(Core):光を通す中心部。屈折率が高い素材。
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クラッド(Cladding):コアの外側を囲み、屈折率が低く、全反射を実現するための層。
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被覆(Coating/Buffer):外部からの物理的損傷を防ぐ絶縁・保護材。
光はこのコアに入射し、クラッドとの境界で繰り返し反射されながら進行することで、ほとんど損失なく長距離を伝送することが可能になります。
光ファイバー通信の特徴とメリット
金属線との比較:なぜ光が優れているのか?
メタルケーブル(銅線)と比較した場合、光ファイバーは次のような大きな利点があります:
例:都市間をつなぐ大容量バックボーンネットワークでは、光ファイバーが標準となっている。
光ファイバーの種類とその違い
素材による分類
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ガラス光ファイバー(Glass Optical Fiber)
石英ガラスを用い、高い光透過率と長距離伝送性能を持つ。
高価だが信頼性が高い。
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プラスチック光ファイバー(POF: Plastic Optical Fiber)
柔軟で軽量。近距離通信(家電・自動車内ネットワークなど)に適している。
モードによる分類
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シングルモードファイバー(SMF: Single Mode Fiber)
1つの光モードで伝送。長距離伝送(100km超)に向く。
通信キャリアなどで使用。
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マルチモードファイバー(MMF: Multi-Mode Fiber)
複数の光が同時に伝送。短距離でコストパフォーマンス良好(LAN構築など)。
✅ IT業界では、社内LANにはMMF、インターネット回線やデータセンター間接続にはSMFが用いられるケースが多い。
光ファイバーの課題と技術的制約
配線の難しさとコストの課題
光ファイバーには以下のような制約も存在します:
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曲げに弱い:過度な湾曲で光漏れや信号損失が発生。
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接続が難しい:光信号を乱さずに伝えるため、接続コネクタや融着機の精度が要求される。
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光-電気変換が必要:コンピュータ機器との接続には、トランシーバーなどの変換装置が必要で、小型化や低価格化が課題。
例:企業ネットワークの構築時、機器の接続にはSFPモジュール(Small Form-factor Pluggable)などの光トランシーバが必要となる。
通信以外の用途での光ファイバーの活用
医療・産業分野での応用例
光ファイバーは通信分野以外にも以下のような用途で活用されています:
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ファイバースコープ(fiberscope)
細い光ファイバー束を使って画像を伝送。内視鏡(医療)、配管検査(工業)などに使用。 -
光ファイバー照明・イルミネーション
美観重視のLED装飾に使用され、側面から光を放つ設計もある。
🎥 例:映画館の通路照明や、建築物のインテリア照明などに光ファイバーが使われている。
今後の展望と光ファイバーの未来
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5G・6G通信基盤として、基地局間の高速・大容量伝送に必須。
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光トランシーバの小型化・標準化(例:QSFP28, OSFP)によって、より多くの企業や個人が光通信を導入可能に。
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量子通信技術や光コンピューティングなど、今後の次世代ITインフラにも不可欠な技術。
まとめ
この記事では、光ファイバー(optical fiber)の仕組みから種類、メリット・デメリット、IT分野での応用事例までを詳しく解説しました。
✅ この記事の要点まとめ
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光ファイバーは、光信号を用いた高速・大容量通信を実現する線材。
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ガラス製・プラスチック製、シングルモード・マルチモードなど用途に応じて種類が異なる。
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通信分野だけでなく、医療・工業・照明分野でも活用されている。
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将来的には6G・量子通信・光コンピュータなどの基盤としてますます注目される。
光ファイバー技術の理解は、現代ITインフラ構築の基礎知識であり、ネットワーク設計や設備投資判断にも直結する重要な要素です。