企業のITインフラにおいて、データバックアップは極めて重要です。
特に24時間365日稼働し続ける必要がある業務システムでは、サービスを停止せずにバックアップを行える技術が求められます。
そこで登場するのがホットバックアップ(Hot Backup)です。
本記事では、ホットバックアップの仕組みやメリット・デメリット、さらに他のバックアップ方式との違いを、ITの専門的観点から詳しく解説します。
ホットバックアップとは?
稼働中のシステムを停止せずにデータを複製
ホットバックアップとは、コンピュータやサーバが稼働したままの状態で、保存されているデータを別の場所に複製(バックアップ)する方法です。
別名「オンラインバックアップ」とも呼ばれます。
この方式は、特に企業の基幹システムや業務アプリケーション、データベース管理システム(DBMS)など、常に稼働していなければならない重要システムで使用されます。
ホットバックアップの特徴
-
サービス停止不要:業務を中断することなく、ユーザーにも影響を与えずにバックアップ可能
-
時間帯の制限が少ない:業務時間中でも対応可能
-
柔軟性が高い:システムの運用状況に合わせて運用が可能
ホットバックアップの技術的な仕組み
データの整合性と非一貫性のリスク
ホットバックアップは、システムが動作中でもデータの複製を行うため、一部のデータが更新中に取得される可能性があるという特徴があります。
このため、「非一貫性バックアップ(Inconsistent Backup)」とも呼ばれます。
例:
-
データベースのトランザクション処理が完了する前にバックアップが実行されると、不完全なデータが含まれる可能性がある。
-
バックアップ中にファイルが削除・更新されると、バックアップとの整合性が崩れる場合がある。
このようなケースでは、後からログの適用やリカバリ手順によって整合性を補完する必要があります。
他のバックアップ方式との比較
コールドバックアップとの違い
コールドバックアップ(Cold Backup)は、システムを一時停止または利用制限した状態でバックアップを行います。
これにより、完全なデータの一貫性を確保できます。
選択のポイント
-
リアルタイム性が重視されるシステム → ホットバックアップ
-
正確なデータ記録が重要なシステム → コールドバックアップ
IT現場でのホットバックアップの活用事例
実際のユースケース
① データベースサーバ
Oracle DatabaseやMySQLなどの多くのDBMSでは、トランザクションログを組み合わせたホットバックアップ機能が実装されています。
これにより、業務を止めずに定期的なバックアップが可能です。
② クラウドサービス
Amazon RDSやGoogle Cloud SQLなどのクラウドデータベースサービスでは、自動ホットバックアップ機能が標準で備わっており、保守作業の手間を軽減できます。
③ Webシステム
ECサイトや予約システムのように、サービス停止が許されない環境では、ホットバックアップにより可用性を維持しながらデータ保護が実現されます。
ホットバックアップの注意点と最適な運用
運用時の注意事項
-
バックアップ対象の整合性確認:ログベースでの補完や、スナップショット機能との併用を検討する
-
バックアップスケジュールの最適化:業務負荷が少ない時間帯に設定
-
リストア手順の事前検証:いざという時に迅速に復元できるように準備
補足技術との組み合わせ
-
RAID構成やスナップショット技術を併用することで、データ保全性と可用性を両立
-
クラウドバックアップとの併用により、災害対策としても有効
まとめ
ホットバックアップ(Hot Backup)は、サービスを中断せずにデータを安全に保管できる革新的なバックアップ方式です。
システム停止を避けつつ、運用中のデータを守るという点で、現代のIT運用には欠かせない存在です。
本記事のポイント
-
ホットバックアップは「稼働中のデータを複製する方式」
-
一部整合性のリスクがあるため「非一貫性バックアップ」とも呼ばれる
-
コールドバックアップとは目的と運用が異なる
-
適切な運用設計により、可用性と安全性を両立可能
重要なシステムやサービスの運用に携わる方は、ぜひホットバックアップの仕組みを理解し、自社のIT戦略に組み込むことを検討してみてください。