スペクトラム拡散(spread spectrum)は、現代の通信技術において重要な役割を果たす信号の変調方式です。
この技術は、信号を広い周波数帯域に拡散することで、ノイズや干渉からの影響を軽減し、通信の秘匿性を高めることができます。
本記事では、スペクトラム拡散の原理、具体的な方式、及びその実用性について詳しく解説します。
スペクトラム拡散の基本概念
スペクトラム拡散の定義
スペクトラム拡散は、元の信号を何十倍も広い周波数帯域に拡散させて送信する方式です。
狭い周波数帯域で強い信号を送るのではなく、広い帯域に薄く分散させることで、特定の周波数帯域でのノイズや干渉を受けにくくなります。
これにより、通信の信頼性が向上します。
ノイズ耐性と秘匿性の向上
スペクトラム拡散では、信号が広帯域に渡って送信されるため、外部の観測者が信号を捉えることが困難です。
たとえ一部の信号を検知できたとしても、全体を復元するのは難しいため、盗聴や傍受に強い特性があります。
スペクトラム拡散の具体的な方式
周波数ホッピング方式(FHSS)
周波数ホッピング方式(FHSS)は、使用する周波数帯を短時間で切り替えることで信号を広く分散させる方法です。
この方式は、初期の無線LANやBluetoothで使用されています。
高速で周波数を切り替えることにより、長時間の通信を均等に広げ、ノイズの影響を最小限に抑えます。
直接拡散方式(DSSS)
直接拡散方式(DSSS)は、ランダムな信号(拡散符号)を組み合わせることで、信号を広い周波数帯域に直接拡散する技術です。
IEEE802.11b以降の無線LANやCDMA方式の携帯電話で広く利用されています。
この方式は、信号が強く、誤り訂正が容易であるため、通信品質が高まります。
スペクトラム拡散とCDM
符号分割多重(CDM)
CDM(Code Division Multiplexing)は、スペクトラム拡散の原理を応用した多重化技術です。
この技術により、複数の信号を同時に一つの伝送路で送信することができます。
異なる拡散パターンを使用することで、同じ周波数帯域を効率的に共用できるため、通信の効率が向上します。
CDMAの仕組み
CDMA(Code Division Multiple Access)は、CDMを用いて複数の通信主体が同時に伝送路を共有する技術です。周波数ホッピング方式やDSSSを活用することで、効率的かつ干渉の少ない通信が実現されます。
この技術は、携帯電話ネットワークや無線LANに広く採用されています。
まとめ
スペクトラム拡散は、現代の通信において欠かせない技術であり、信号の秘匿性や耐障害性を高めるために重要です。
周波数ホッピング方式や直接拡散方式を通じて、信号を広帯域に分散させることで、より安全で効率的な通信が実現されています。
この技術は、今後の通信技術の進化においても重要な役割を果たすことでしょう。
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