ダークファイバー(dark fiber)は、敷設されたものの、現在は稼働していない光ファイバー回線を指します。
かつては未使用の状態で放置されていましたが、現在では通信事業において重要なリソースとして活用されています。
本記事では、ダークファイバーの仕組みや用途、そして通信インフラへの影響について詳しく解説します。
ダークファイバーとは?
ダークファイバーの基本的な仕組み
ダークファイバーとは、敷設された光ファイバーケーブルの中で、現在使用されていない未活用の回線です。
通信事業者が将来の需要を見越して、余分に敷設したものが多く、そのままでは稼働していないため「ダーク」と呼ばれます。
ダークファイバーの歴史と活用の変遷
1990年代から2000年代初頭のインターネット普及期において、NTT東日本や西日本などの大手通信事業者が大量の光ファイバーを敷設しました。
しかし、その多くは需要の変動により未使用のまま放置されることとなりました。
2001年の制度改正により、他の通信事業者に対してダークファイバーを貸し出すことが可能になり、これが新たな通信インフラの活用方法として注目され始めました。
ダークファイバーの用途とメリット
通信事業者による活用
ダークファイバーは、新興の通信事業者やインターネットサービスプロバイダ(ISP)によって利用され、自社のネットワーク拡張や拠点間接続に活用されています。
これにより、回線の新設にかかるコストや時間を大幅に削減できます。
契約形態の種類
- 芯線貸し: 光ファイバーの1本ずつを単位として貸し出す。
- 波長貸し: WDM(波長分割多重)技術を使って光信号の波長ごとに貸し出す。
- 帯域貸し: パケット通信回線としてデータ伝送量を単位にして貸し出す。
地方自治体や電力会社による活用
地方自治体や鉄道事業者、電力会社などが管理する光ファイバー網もダークファイバーとして提供されることがあり、これらの回線は商業通信だけでなく、公共サービスや防災システムのバックボーンとしても利用されています。
ダークファイバーの実例
ある新興通信事業者は、NTTからダークファイバーを借り受け、自社のインターネットサービスを短期間で全国に拡大しました。
また、ある電力会社は、自社の光ファイバー回線を他の通信事業者に提供し、追加収益を得ると同時に地域の通信インフラ整備を促進しました。
ドライカッパーとの比較
ドライカッパーとは?
ドライカッパーは、光ファイバーではなく銅線(メタルケーブル)の未使用回線を指します。
特に、電話局から加入者宅に至る「ラストワンマイル」の回線が対象となることが多く、これらはADSLや直収電話事業者によって利用されます。
ダークファイバーとの違い
ダークファイバーが光ファイバーであり、高速かつ大量のデータ伝送が可能であるのに対し、ドライカッパーは従来の電話回線をベースにしており、伝送速度や帯域幅に限界があります。
ただし、利用コストが低い点ではドライカッパーにも利点があるため、用途によって使い分けがされています。
ダークファイバーがもたらすセキュリティ上のリスク
無許可の使用とその対策
ダークファイバーは物理的には敷設済みであるため、無許可で使用されるリスクがあります。
これを防ぐため、通信事業者はダークファイバーの監視やアクセス制御を強化しています。
情報漏洩のリスク
光ファイバー回線は基本的に安全ですが、物理的に回線を傍受することでデータが盗まれるリスクも存在します。
セキュリティ対策としては、暗号化や侵入検知システムの導入が推奨されます。
ダークファイバーの将来展望
次世代通信への貢献
5GやIoT(モノのインターネット)の普及に伴い、データ伝送量の増加が予想されています。
ダークファイバーを有効に活用することで、次世代通信インフラの整備が加速され、スマートシティの実現にも貢献できるでしょう。
コスト削減と持続可能性
既存のインフラを活用することで、新規回線の敷設に比べてコストを抑えることができ、資源の有効活用にもつながります。
ダークファイバーの再利用は、環境にも優しい選択肢といえます。
まとめ
ダークファイバーは、未使用の光ファイバー回線を活用することで、通信インフラのコスト削減や効率化を図るための重要なリソースです。
その用途は多岐にわたり、地方自治体から新興の通信事業者まで幅広く利用されています。
また、5GやIoTの普及に伴い、その重要性はますます高まると予想されます。