モジュール分割は、プログラム設計においてシステム全体を複数の部品(モジュール)に分割し、開発・管理をしやすくする重要な手法です。
この分割により、開発者は各モジュールの機能や構造を明確にし、コードの再利用や問題発生時の迅速な対応が可能となります。
本記事では、モジュール分割の基本概念と代表的な手法について詳しくご紹介します。
モジュール分割の概要とメリット
モジュール分割は、システムを複数のモジュールに分け、機能ごとに独立したプログラムのまとまりとして構成する設計手法です。
この手法により、プログラムの視認性が向上し、開発者間での分担が容易になります。
さらに、再利用性や保守性が高まるため、開発効率も改善されます。
代表的なモジュール分割の種類
1. 共通機能分割
共通機能分割は、プログラム内で繰り返し使用される処理を一つの共通モジュールとして切り出す方法です。
たとえば、エラーメッセージの表示やデータの検証など、さまざまな箇所で同じ処理を行う部分を共通モジュールにまとめ、必要に応じて呼び出す設計とします。
これにより、コードの一貫性が保たれ、メンテナンスも効率的に行えます。
2. TR分割(トランザクション分割)
TR分割(トランザクション分割)は、処理対象のデータの種類や処理内容に基づいてプログラムを分割する手法です。
たとえば、顧客情報の登録や注文情報の更新といった処理単位をトランザクションとしてまとめ、データの種類ごとにモジュールを作成します。
この方法は、データの種類によって処理の流れが分岐する場合に適しており、データの管理が簡便になります。
3. STS分割
STS分割は、**データの入力(Source)、変換(Transformation)、出力(Sink)**という3つの流れに着目してモジュールを分割する手法です。
たとえば、データの読み込みを行うモジュール、データの計算や変換を行うモジュール、結果を表示や保存するモジュールに分けることが一般的です。
これにより、各モジュールが担う役割が明確になり、処理の流れを簡潔に把握できます。
4. ワーニエ法(Warnier法)
ワーニエ法は、1970年代にフランスのジャン・ドミニク・ワーニエ氏によって提唱された手法で、データの構造を基に制御構造を決定していく方法です。
データの使用頻度やタイミングを分析し、連結、選択、繰り返しの3種類の制御構造を組み合わせてプログラム全体を構築します。
この手法は、プログラムの流れが視覚的に理解しやすいワーニエ図によって表現されることが多く、設計段階での効率化に役立ちます。
5. ジャクソン法
ジャクソン法は、入力データと出力データの構造対応関係を基にプログラム構造を決定する手法です。
1975年にマイケル・ジャクソン氏が考案した方法で、データの流れに基づき、基本的な制御構造を組み合わせてモジュールを設計します。
この手法により、入力データから出力データへの変換がスムーズに行える構造を作り出すことができます。
モジュール分割の実務での活用例
エラー処理の統合(共通機能分割)
複数の機能にわたってエラー処理が必要な場合、共通機能分割を使ってエラーハンドリングを一つのモジュールに集約することで、コードが簡素化され、保守がしやすくなります。
データベース操作の効率化(TR分割)
顧客データ、製品データ、注文データなどを扱うプログラムでTR分割を用いると、各データのトランザクションごとに処理をまとめられ、データベースへのアクセス効率が向上します。
データ処理パイプラインの構築(STS分割)
大量のデータを変換・出力する際、STS分割を利用して入力、変換、出力のモジュールを分離することで、データパイプラインが明確になり、スムーズな処理が可能となります。
まとめ
モジュール分割は、プログラムの機能やデータの種類に応じた複数の手法があり、これを活用することで開発効率が大幅に向上します。
設計段階で適切な分割手法を選択することにより、保守性、再利用性、エラー処理の一貫性が確保され、全体の品質向上が期待されます。