現代のインターネット通信や企業ネットワークの基盤となっている「パケット交換網(packet-switched network)」は、データ通信において重要な概念の一つです。
しかし、意外とその仕組みやメリット・デメリットを正確に理解している人は少ないかもしれません。
本記事では、パケット交換網の基本的な仕組みから、回線交換網との比較、さらに企業向けの活用事例まで、ITの専門知識を交えて詳しく解説します。
パケット交換網とは?
パケットで通信するネットワーク方式
パケット交換網とは、データを「パケット(小包のような単位)」に分割して、それぞれ独立して転送する通信網のことです。
各パケットには宛先情報が付加され、目的地に向けて別々の経路を通ることもあります。
この方式は、データ通信を効率的に行うために設計されており、現代のほぼすべてのコンピュータネットワーク(例:インターネット)で採用されています。
回線交換網との違い
両者の比較と利点・欠点
パケット交換網の最大の利点は、複数ユーザーが同時に通信できる「効率性」と「柔軟性」です。
一方、リアルタイム性が求められるアプリケーションには向かない場合もあります。
パケット交換サービスとは?
企業通信を支えた歴史ある技術
パケット交換サービス(packet-switched service)は、通信事業者が提供する専用のパケット通信インフラを利用したサービスです。
特徴:
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専用プロトコルでデータをパケット化
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通信経路は常時接続ではなく、必要なときだけ使用
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通信時間ではなくデータ量で課金
主な用途(過去):
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企業の拠点間通信
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金融機関や流通業の業務専用ネットワーク
日本国内の主な例:
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NTTの「DDX(DDX-P / DDX-TP)」「INS-P」
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KDDの「VENUS-P(国際パケット交換サービス)」
インターネットが普及する以前、これらのサービスは企業にとって重要な基幹通信手段でした。
パケット交換網の現代的な応用例
例1:インターネット通信の基本
IPパケットを使ったインターネットの基盤通信は、パケット交換網そのものです。
Webアクセス、メール、クラウド通信など、ほぼすべてのインターネット利用がこの仕組みによって支えられています。
例2:VPNやクラウド接続
企業が自社ネットワークを安全に拡張する手段としてVPN(仮想専用線)がありますが、その通信もパケット単位で送受信され、信頼性の高い接続を提供します。
パケット交換網を支える技術要素
プロトコルと機器
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IP(Internet Protocol):パケットの配送ルールを定めた基本プロトコル
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ルータ/スイッチ:パケットの中継・経路選択を行う
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QoS(Quality of Service):通信品質の最適化を実現する技術
これらの技術が連携することで、パケット交換網は安定したサービス提供を可能にしています。
まとめ
パケット交換網は、現代のネットワーク社会を支える基本構造であり、その柔軟性と効率性により、従来の回線交換方式を大きく上回る利便性を実現しています。
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パケット交換網とは:データを分割して送る方式の通信網
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回線交換網との違い:共有型で効率的だが、リアルタイム性には課題も
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かつてのパケット交換サービス:インターネット登場以前の企業通信手段
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現在の応用例:インターネット、VPN、クラウド連携など広範囲に活用
パケット交換網の理解は、ネットワーク構築・運用や通信インフラ設計に関わる技術者にとって不可欠な知識です。